三回目の熱

りばーしゃ

刻まれた半透明

 小学校からの同級生とクソでかいデパートで何かの追いかけっこのイベントをしてる時、とある心の病んだ作品があるスペースに着く。


 刻まれた半透明の、原型は無くなった作品の数々。


 ふと気になった自分はそこへ足を運ぶと、それを作る体験してるナイフを持った子供を見る。


 ぼろぼろの服装だ、今その手にある鋭く光る片刃のナイフと違って穴は空き、ほつれ、切れ込みが至る所にある。


 背後から自身を見る目線に気付いたのか、振り向くと分からない表情で子供は「何で生きてるの」と呟き、こちらへ歩み寄る。


 決して友好的では無い雰囲気に足を数歩下げらせると、やはりその子供は地を蹴った。


 もはや表情など分からなくても分かる、これは自分を〝作品〟にしようとしてるのだ。




 逃げる。


 逃げる。


 逃げる。




 幸い相手は子供、大人の自分なら引き離すのは用意と分かっていてもここは自分の知ってる場所では無い。デパートだ。


 既にここはデパートから死の迷路と化した。地の利があるのか、子供とは対して距離が離れない。


 直線で後ろを僅かに確認するも、感情の無い目で、顔で子供はそのナイフを左手に握り締め、言葉にならない声を上げながら一直線にこちらの命を目指してくる。


 話しが通じそうなどまるで無い。何とかして逃げ切らなければ。


 すると左側に〝ある設備〟がある案内が見えた。


 これだ、これしか無い、そう思った自分は子供の視界から咄嗟に消えたようにする為にきびすを返しては鋭角に商品が陳列された棚を曲がり、その場所へと向かう。


 これで時間は稼げた。その〝ある設備〟とは──エレベーター。


 乗れてしまえばこちらの逃げ切り、乗れなければ首元に死の刃。


 足を掛けたその先に移るのは今まさに閉まろうとしている地上への扉。


 地を蹴ろ、身体を使え、自身にはまだ死ねない理由がある。


 閉じそうになっていたそれに身体をねじ込み、閇ボタンを押す。


 狭く誰も居ない空間に、機械音と身体の浮く感覚が響く。


……間に合った。


 数字の小さくなる目線の表示、高い知らせの音に扉が開くと…そこには同級生の顔。


 今探しに行こうとしてた所だったと、微笑む同級生に肩を叩かれながら、足をその空間から後にした。

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