1学期 神隠し編

さぁ常闇の街へ

ピピピピピッ ピピピピピッ


「もう朝か・・・・」


 午前7時携帯のアラームによって起こされた、日月遊斗かげつゆうとは目を擦りベットの上から動けずにいた。


眠い・・・・まだ起きたくねぇでも入学式早々遅刻する訳にはいかねぇし・・・・もう春だっていうのに寒すぎるのが悪いんだよな。布団から出たくね~


ゴンゴンッ

起きてるかー起きないと遅刻するぞー


 出たくないと布団の中でもぞもぞしてたら、玄関が力強く叩かれ活発で元気そうな声が聞こえてくる。この声とこんな事をするのはあいつしかいない。引っ越したばかりで、まだこっちに友達も知り合いも出来ていないのにこんな早朝から迷惑な奴は、元気で運動神経が良く太陽みたいなそれでいてちょっとウザいあの幼馴染しか居ないのだ。俺は、眠い体を起こし未だに扉を叩いている馬鹿を止めるために、玄関を開くと想像通りの男がそこにいた。


「よっ!まだ寝てたのか?さっさと着替えて行かないと遅刻するぞ」

「近所迷惑だ。起こし方を考えろよ・・・・それに俺は絶対に遅刻しない」

「はいはい、さっさと着替えて行くぞー」


 朝から爽やかな顔をして扉を叩いていた幼馴染夏山陽太かやまようたはさわやかな笑顔で言うが俺はこの朝から元気満点なこいつを黙らすために、睨みつけるが全く気にせず部屋の中に入ってきた。俺は自分の家かのように部屋の奥に進む陽太に溜息を付くとその後を追っていた。


「まだ荷解きしてないのか?俺もまだ全部は終わってないけど、学校も始まって忙しくなるんだから早めに荷解きしちゃった方が良いぞ」

「分かってるけどやる気でないんだよ・・・・」

「今日帰ったら手伝ってやるから」

「マジで?よっしゃ!」

「はいはい、喜ぶは良いがさっさと着替えようなー」


 まだ引っ越してから4日しか経ってないのに、ほとんど荷解きが終わってる陽太が変なんだよと文句が言いたかったが手伝ってくれるんだったらラッキー、陽太がうるさいしさっさと着替えるとしますか。まだ一回も袖を通していない新品の制服を取り出し、着替えていると、


「冷蔵庫何も入ってないじゃないか・・・・朝飯はコンビニで買うか」

「ほーい」

「初日からそんな調子だと遅刻だらけになりそうだな・・・・」

「俺は絶対に遅刻しませーん」

「裏道を使うのは駄目だぞ~危険だしそれに慣れたら大変だろ」

「え~お前は俺の母親かっ」

「幼馴染でありお前の母親から遊斗をお願いねって頼まれたお隣さんでもあるな」


 実家とは離れた場所の私立高校に進むことになって家から通うのは大変だからと、学校まで電車を使って45分のアパートに一人暮らしすることになったが同じ学校に進む陽太に隣なら何かあっても大丈夫でしょ?と陽太の母親がうちの母親に提案したことによって隣の部屋に陽太が住むことになったが俺の面倒まで頼んでいるとは・・・俺の母親陽太に頼り過ぎじゃね?そんなに頼りないか俺?そんなことを考えながら制服に着替えると、陽太は携帯を見てゲッ!と声を出していた。


「何だよその潰れたカエルのような声は」

「最悪だ・・・自身事故で電車止まってる。遅刻確定だ!!!走るぞ!!」

「いやいや、ここから走ったって間に合わないって」


 時刻はもう7時15分を回っており、7時半の電車に乗れば8時半集合に間に合うが、ここから走っても間に合わない。もしも間に合ったとしても学校まで走ったら、汗だくで入学式を受けることになるそんなの絶対に嫌だ。


「はぁ~入学早々遅刻とか」

「何言ってんだよ。絶対に遅刻はしないって言っただろ?」


 いくら電車を逃しても、8時に家を出たとしても俺には絶対に遅刻しない裏道がある。それを使えば、電車が遅延したなんて些細な事どうってことないが。陽太は裏道を使うのが嫌いみたいなんだよな~便利なのに


「裏道を使うのか・・・・?」

「遅刻しないためにはそれしかないだろ?陽太はあそこで怖い思いをしたから嫌だろうけど仕方ないだろ」


顔をしかめ嫌がる陽太だが、遅刻したくない気持ちが勝ったのかしぶしぶだが頷いた。


「よしっじゃあ準備するか」


 俺は部屋の隅に置いておいた、黒い鉄のようなもので出来た四角形のランタンを持ってくると、格子状の柄になっている側面の扉を開け近くのアウトドア用品店で買った太い蝋燭を入れ火をつけ上部の取っ手を持つと、鞄を持ち


「よしっ準備完了。それじゃあ素敵な世界へご案内するぜ」

「あの世界のどこが素敵なんだか・・・・」

「雰囲気作りだよ」


 靴を履き、玄関のドアノブを握り繋がれと念じるとじわじわと扉の下から黒く変色していき少しすると光を全く通さない黒き扉が出来上がる。


「じゃあ行こうか、常闇の街へ」

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