世界を救った意味

「なぁエレナ」


 次の日の朝、エレナと訓練を終え綺麗な青雲を見上げながら彼女に問いかける。


「何よ」

「世界を救った意味ってあったのかな?」

 

 最近分からなくなってきた。

 何も知らない頃は魔族が一方的に殺戮を行い国や他の村を脅かしていると思っていた。

 でも実際どうだ……世界を救ったのに、今度は僕が目の敵にされ追放された。

 世界を救ったのにだ。

 皆の為に心を殺して戦った。

 本当は戦いたくなかった。

 だけど、エレナやノウェムの時のように誰かが居なくなるのは嫌だったし、それを他の人たちに味わわせたくなかった。

 だから僕一人で魔王を倒せるくらい戦って……結果はこれだ。

 意味は……あったのだろうか?


「ないわね」


 あっさりと言い放った。

 

「だってそうじゃない、あんなに酷い目に遭わされて勇者じゃなくなった瞬間掌を返したように追放って……救えない」


 エレナには僕の事情を話しているので、僕の場合だったらという名目で話しているのだろう。

 救えないか……。

 やっぱりそうだよな……僕の人生など救えない人生だ。


「だけどよかったこともある……貴方には家族と呼べる子たちがいるじゃない」


 精霊達……もし勇者に選ばれなければ彼らに出会う事もなかったし、こんなに幸せを感じる事はなかっただろう。


「レウルは、それでも救った意味はなかったといえる?」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る