デートの終わり

「……はぁ……はぁ……」

「すみません」


 申し訳なさそうな顔で、ラナークは見てくる。


「落ち着いたか?」

「……はい」

 

 クレープは彼女の手の中でぐちゃぐちゃになって服にも飛び散っていた。


「全く……」


 服に着いたものを拭きとる。

 ここで水魔法をすると、染み込むし他にも汚れが散らばる。


「これで良し、気持ち悪くないか?」

「大丈夫なのです」

「ほれ」

「いいのですか?」

「あぁ、食べたかったんだろ?」


 そう言うと、彼女は受け取りクレープを頬張った。

 

「美味しいか?」

「美味なのです」

「そうか」


 何にせよ、楽しそうでよかった。


「どうした?」


 ラナークは僕とクレープを交互に見ると、こちらに向けてくる。


「半分こです」

「いや、いいんぐっ!?」


 口にクレープを突っ込んできた。

 甘いイチゴの味に、イチゴをすり潰したゼリーは蜂蜜の味と上手くマッチングしていた。


「無理やり突っ込むな」

「あぅ……」


 クレープをかみ切って飲み込むと、ラナークの頭を小突いた。


「ほら、早く食え……時間が無くなるぞ」

「あ、そうでした」


 もぐもぐと急いで食べ進める。


「喉詰まらせるな……ほら、言わんこっちゃない」

 

 案の定、彼女は咽る。


「ほら、これ飲め」


 鞄の中から水筒を渡す。

 ラナークは一気に飲み干したが、彼女は飲みながら咽たのか水が少しこぼれる。

 

「落ち着け、全く……」


 そうして彼女が食べ終えるまでゆっくり待った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る