当事者

 次の瞬間、僕はすぐに動く。

 彼女は捕えた女の目の前まで来ていた。

 躊躇いのない踏み込みだった。

 僕は彼女が振った剣を背中腰に帯刀している短剣を抜き、彼女の剣の軌道を逸らす。

 彼女の攻撃は女性を捉えることはなかった。

 軌道は逸れ、勢い余ってその場に転げ落ちる。

 彼女の剣は明後日の方向へ飛んでいく。

 しかし、そんなことはどうでもいいのか、彼女に掴みかかろうとする。


「落ち着け」


 鎖の魔法を放ち、彼女を落ち着かせる。

 しかし、彼女は止まらない……鎖が腕に食い込み、動けないはずなのに、彼女は怒りに任せて引きちぎろうとする。

 このままでは彼女は腕を引き千切ってでもこちらに来るだろう。


「少し眠っててくれ……」


 危険と判断し、彼女の目に触れる。

 すると彼女はスゥっと眠りについた。

 陰魔法の応用だ。

 とはいっても普段の奴らなら対魔力で効かないが、理性を失っているから使える魔法なのだ。

 陰魔法は無意識の警戒心がある場合、ほとんど効くことはない……。

 意識を刈り取る魔法でも意識的と無意識両方の場合、少しくらいだ。


「お前達、二人の微精霊はここの奴らか?」

「そうだ、元々ここ出身の奴だった」

 

 リーダー格の男がこれ以上隠しても意味がないと踏んだのか、口を開いた。

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