41 戦闘

「おいおい、血の気多いな……」


 男が剣を抜く。 

 古びた剣……あちこちに錆びた跡がある手入れの行き届いていない剣だった。

 

「手入れくらいしないとだめじゃないか……」


 男の剣を魔力を指先に纏った剣で受けとめ、剣を見る。


「これ、なかなか年代ものだな……こんないい剣はめったにないな」


 男は左腕から先ほどの短剣を出そうとしたので、左腕をつかむ。

 

「なかなかいい動きだな……」

 

 男の胸が光る。

 恐らく仕込んでいた魔法だろう。


「危ないじゃないか……」


 そのまま僕は両手で右に勢いよく投げ飛ばす。

 投げ出された身体を捻って着地する。

 男は着地すると僕を見ながら、


「貴様、人間か?」

「よく言われるけど、まぎれもない人間だよ」


 そういうと、男はしばらく僕の方を見つめ深いため息をつく。


「おい、剣をよこせ」


 そういうと、聖剣を男の方に投げる。


「やっぱり君が聖剣に選ばれし勇者か~」

「貴様、怖くないのか?」


 怖いかと言われれば確かに脅威だった。

 元勇者で聖剣の力は嫌という程知ってるからな。


「怖いわけないだろう」


 僕は聖剣に見捨てられた。

 しかし、それは通常とは違う理由だ。 


「強がりはよせ、投降するなら命だけは保証してやる」

「お前の権限でどうにかなるのか?」

「なるさ、俺は勇者でそれなりの権限が与えられてる」


 こいつはまだ何も知らない。

 その権限が国の都合でできてることも、聖剣の真の意味を……。


「どうする?」

「お断りだ、せっかく自由になれたのに戻るわけがないだろう」


 男は口元に笑みを浮かべる。


「残念だよ、なら喰らいな」


 そういって男は剣を抜いて天に向けた。


 

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