いくつかの記事抜粋 テロ後編

『国土交通省は洋上都市法の制定を前提に、関係各所への動きを加速する事になった。

 ゲーテッド・コミュニティの一環として、一条民間委員から経済財政諮問会議で出されたこの提案は同時多発テロ後に議論が進展し、洋上都市法として秋の臨時国会で成立する運びとなった。

 これはテロ後に起こった治安改善問題の一環として、犯人及び支援グループが東京湾のボートハウスを拠点にしていた事が警視庁の調べで分かった事が大きい。

 都心の地価はバブル期の価格から半値以下に下がったとはいえ一般市民に手が出せる価格ではなく、3K職に就いている二級市民の生活の場としてのボートハウスは犯罪の温床として危険視されていた経緯がある。

 この法律は東京湾に急増しているボートハウス対策の核として用いられる予定で、木更津に実験都市の名目で老朽化した30万トンタンカー数隻を使って上層部に居住区を下層部に上下水及び発電などのインフラを整備した人口一万人程度の都市を用意する予定だ。

 予算規模は二百億を予定し、タンカー数隻をつなぎ合わせた人口一万ほどの都市ができる事によって、都内で居住地を探すのが難しい二級市民上層階級の人間が既に移住を希望しており……』


『桂華グループはカード事業を大規模に再編する。

 これまで、桂華金融ホールディングスのカード事業と帝西百貨店のカード事業が別々に展開されていたのだが、それを統合。

 東日本帝国鉄道が発行する予定のICカード規格に合わせる事でキャッシュカード・クレジットカードとしての機能も付与。

 桂華グループの社員証もこの規格にする事で、一気にカード普及を加速する狙いがある。

 更に、都庁および北海道庁及び樺太道庁と提携して身分証としての機能を持たせる事を合意。

 住所に携帯の番号と証明写真を登録させる事で公的身分証として扱い、未だ身分登録すらしていない二級市民に対して法の保護を掛ける事を目的にしている。

 同時多発テロ後にこの手の身分証明を持たない二級市民たちが就学や就職を断られたりするケースが頻発。

 政府が対処に動いていた所だが、先に自治体と民間企業が公的身分を保証する事で自社社員を守る形となった。

 カードには幾つかの種類があり、発行に委託金を払う身分証明用のレッドカードから、鉄道利用時の現金チャージ機能付きのオレンジカード、それにキャッシュカード機能がついたイエローカードに、クレジットカード機能が付いたグリーンカード等がある。

 そこから先は華族や財閥関係者等のセレブ用カードとなり、最上位のウルトラ・ヴァイオレットカード保持者は現状の所一人しか登録されていないと桂華グループ広報は発表している。

 野党は政府の動きの遅さに批判を……』


『赤松商事子会社の人材派遣企業シビュラが現在注目を集めている。

 注目されるのは、世界一のスーパーコンピューター『シビュラ』を用いた雇用動向をインターネットで常に提示する事で失業率の改善を図ろうとしている点だ。

 全国の求人企業及びハローワークと業務提携し求人広告を毎日単位で登録・更新。

 市町村単位でどの業種に募集が掛かっているかを可視化させるだけでなく、携帯GPS機能を使って表示させる。

 それだけでなく、その職に就くための資格や資格習得の資金及び日数の提示とその資格習得の自治体補助の有り無しまで見せることで、テロ後に悪化しつつある雇用率の改善を図る。

 シビュラによって全国自治体レベルの雇用状況が可視化された結果、都市部では3Kを中心に未だ雇用が健在であり、二級市民と一般市民がその職を奪い合っている構図が……』


『アフガニスタン内戦が激しさを増している。

 北部同盟に対するイスラム原理主義武装勢力の総攻撃は失敗に終わり、北部同盟はアフガニスタン北部の要衝マザーリシャリーフ奪還の動きを見せているが武装勢力側は大量破壊兵器による脅しを行っており予断を許さない。

 現在のマザーリシャリーフにはイスラム武装勢力が旅団規模で守備に就いているとみられ、北部同盟側は各地での武装勢力の攻勢に晒された結果、攻撃する戦力の抽出に苦労しているという。

 その一方で、隣国ウズベキスタンやタジキスタンからは北部同盟を支援する義勇兵が送られており、大隊規模の戦車が国境を越えたという報告に武装勢力側は『内政干渉』と非難声明を出して状況は予断を許さない。

 これら義勇兵の支援の影には先のテロで攻撃を受けた米国が居り、国内が正式にアフガニスタンに対する武力行使を議会が承認する間北部同盟が崩壊しないように……』




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洋上都市

 九竜城や軍艦島みたいなものをイメージ。

 ちなみに、ボートハウスは戦後結構な時期まで残っていた記録がある。


カード事業

 もちろん元ネタは某TRPG。

 桂華グループは皆様の幸福のために尽くします。

 UV様はもちろん瑠奈。


シビュラ

 これも元ネタは某アニメ。

 小説版スピンオフを呼んで、元が就職の適性から始まったと書かれていてえらく納得した覚えが。


マザーリシャリーフ

 当時のニュースでも焦点になった町でここの陥落が武装勢力の崩壊のきっかけとなった。

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