第肆章
情報確認。規格外番号(ナンバーズ)
他、十二天将、
他、
その他各パートナーはそれぞれの相方の後ろで待機しており、息をするにも重苦しい空気が流れているところだ。
「今日この日を迎えられた事、私は心より嬉しく思う。今の今まで、1000年もの間変わらなかった状況が今、ようやく動いた。一歩踏み出す事が出来たのだ。そして進んだからには後退などしない。確実に、着実に前へ進む」
およそ100年、術師らの戦いを見届けて来た教皇は興奮気味だ。年齢もあって血圧が気になるところだが、
「アイアン・メイデンが欠けた今、
まるで政治家の演説の様だった。
力と熱の籠った言葉は、とても100歳を超えた老人のそれとは思えなかった。
現にこの作戦を前以て知らされていなかった陰陽師、並び
「十二天将、十二星将から1人ずつ選抜し、チームを組んで4人1組で
「もちろん。
道満の言葉に、24人の幹部よりもその後ろで立ち尽くすパートナーらの方が緊張していた。
最悪自分達が足を引っ張って、荷物になって、それで敗走する可能性だって――最悪、全滅を招く事だってあり得るのだから。
そんな彼らの緊張を煽り、24人の意識をより強く向けさせるため、晴明はホログラムを起動。円卓の中央に巨大な水晶体が映り、粘土細工のように
「
24人を差して言っている風に聞こえるが、実際はもうガチガチに緊張しているパートナーらに向けられた言葉である事は言うまでもなかった。
彼らの中にはそもそも
今回皆が集められたのはそのための勉強会であったのだと、十二天将、白虎。
「ではアンデルセン神父、よろしくお願いします」
円卓にずっと足を乗せ、煙草を噴かしていた神父らしからぬ男が、長い脚を折り畳んでから立ち上がる。
白煙を吐きながら円卓中央に立った神父は小さな淵の丸眼鏡を押さえ、短く欠伸した。
「まずは……人類が最初に発見した
牛鬼。
体躯はおおよそ4メートル。助走無しのほぼ垂直跳びで634メートルを跳び越えた話は、シルヴィも聞いた事があった。
当初は何か特別な術か何かだと思っていたのだが、話からして本当に、単純な膂力だけの話らしい。
「続いて……
ニャルラトホテプ。
牛鬼に比べればそれほどではないと感じるが、ほぼゾウと同じサイズ。人間相手なら充分に大きい部類だ。
出現場所は不特定で、発見された順番こそ2体目だが、発見された回数で言うと1番少ないのかもしれない。得体の知れない存在だ。
「
ジャヴァウォック。
これについては、シルヴィ含めた全員が知っている。何せ訓練生時代、最も凶暴な魔性の基本的例として、これの襲撃事件を聞かされるからだ。
炎と毒の霧。そして呪詛の言霊を吐く邪龍。破滅の化身。
姿こそ直接見た事がないが、シルヴィは正直に言って、この魔性に今1番の恐怖を抱いていた。
「続いて、
卍観音。
名前だけ聞いた事がある程度だ。あまり知られていないのか、幹部の中にも中央のホログラムと記された情報を見つめている人が数人いた。
もしもこれと戦う事になるとすれば、近接型の自分は苦戦を強いられるだろう事を、シルヴィは予感した。
「
ルシフェル。
弐番のニャルラトホテプ程ではないが、そこまで多く発見例のない魔性だ。知能が高いが故に、術師を避けているのか。それともただ面倒なだけか。
聞いた話では2つの煉獄を操り、相手に死に方を選ばせる残忍な性根をしているとの事だ。術の競い合いになったら、おそらく勝ち目はかなり薄くなる。
「
白鯨。
生まれた時、月が落ちて来たと勘違いした人々で世界中がパニックになったらしい。
全長6キロメートルにもなる巨体で優雅に泳ぎ、腹が空けば、近くにいる魔性を文字通り根こそぎ捕食する。その際、大地も人も関係なく呑み込む。
まともに戦闘出来た記録はない。果たして今集まっている中で、これとまともに戦える人がいるのか、甚だ疑問である。
「
ユグドラシル。
どの魔性にも該当しない形態の大木。
一応、魔性を飼う魔性として知られているが、実際のところは定かではない。が、脅威である事もまた事実であり、油断ならない相手だ。
「えぇっと……あぁ、
九頭のヒドラ。
これに今までどれだけの術師が殺されたか。
山のような巨体に9つの頭。それぞれに銜えた9つの大刀。そして、神話の英雄さえ殺したヒドラの猛毒さえ持つ凶器の塊。
普段は深く眠っていて、あまり起きないらしいが。
「
ベルセルク。
強敵を求め、強敵と戦う事を求める狂戦士。
1000年の歴史で、これ1体に100人以上の幹部術師が殺された。海を渡る事は出来ないらしいので人類全滅こそ避けられているが、真っ先に抹消したい魔性の1体である事は間違いない。
「
クレナイマンタ。
白鯨と同じで空を遊泳する巨大魚。常に開いている口から大量の魔性を呑み込むが、酸素の低下が危惧されている。
過去、白鯨の縄張りに追い込み、同士討ちさせる計画が行なわれたが、多くの犠牲を出しながら幾度も失敗に終わったため、今では禁止とされているとか。
「
ペンドラゴン。
ジャヴァウォックと並んで規格外の双龍とされている。
ただしジャヴァウォックは獣という感じだが、ペンドラゴンはさながら騎士のようで、術師の中には、これをわざわざ見に行く輩がいるとか。
強さは間違いなく上位に入るだろう。
「そして最後……
ペイル・スレイプ。
近接戦主体では、これが一番どうしようもない。
これを中心とした半径1キロ圏内が猛毒の雲海に沈むと言うのだから、対処も何もあったものではないだろう。
戦闘より、まず毒と細菌を何とかする事を考えねばなるまい。
「以上。簡単ですが、説明を終えます」
「ありがとう、アンデルセン神父……以上12体。これらのどれに誰と挑むのか、実戦に出る君達自身が決めて欲しい。君達の活躍を期待している。では、解散」
ミケランジェロの号令で、皆が一斉に席を立った。
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