第9話 ヘルちゃんの本気
イズンと名乗った女の子はあっという間にニブルヘイムの皆様方に受け入れられてますの。
見た目は確かにわたしも認める可愛さですわ~。
仕方ないとは思いましてよ。
そこはわたしも認めざるを得ませんわ!
「かわいいはしぇいぎでしゅわ」
「しぇぎ~しぇぎ~」
合いの手を入れているニーズヘッグはバレていないと思っているのか、わたしの頭の上でリンゴを齧ってますわね。
唾液だけでなく、果汁まで髪に垂らすのは止めて欲しいですわ。
「しょれにしてもあの人
「ましぇんましぇん」
お兄様は少々、脳が残念なすぐに尻尾を振るわんこですから、仕方ないですわ。
確か、お兄様はもっと凹凸のある女性が好みだと思っていたのですけど、おかしいですわね。
幼女趣味があったのかしら?
わたしという可愛い妹がいながら?
『それを自分で言ってはいけないよ』ともう一人のお兄様の声が聞こえましたけど、気のせいですわね。
あぁ、聞こえてませんわ。
スカージとメニヤは良く言えば、素直。
悪く言えば、単純なところが影響しているのでしょう。
それにあの二人、何よりも可愛いものに弱いのですわ。
アグネス達は平気かと思えば、そういう訳でもなく、一緒にお菓子を食べている姿をよく見かけるのでほぼ毒牙にかかってますわね。
唯一、影響を受けていないと思われるのは
彼は「あの子、かわいいけどさ。何か、胡散臭いんだ。本当は何を考えてるんだか、分かんねえ気がする」などと言ってましたわね。
わたしは一計を案じましたの。
敢えて、一人だけで昼なお暗き『暗黒の森』へと分け入り、敵を迎え撃つ準備は万端に整えて、手ぐすね引いて待っている訳ですの。
こういう時は肉を切らせて骨を断つですわ~。
わざと隙を見せ、馬脚を現したところをギッタンギッタンにしてやるのですわ!
「いいでしゅわね? ニーズヘッグ」
「でしゅ~」
地中にニーズヘッグも潜ませてありますの。
二手三手先の読みもバッチリですわね。
さぁ、どこからでもかかってきなさいな。
「こんなところに一人であた」
「我が敵を射よ!
「ち、ちょっと。何の冗談なの!?」
見事に釣れましたわ~。
スキップをしながら、無警戒に近付いてきたのがイズン……あなたの敗因でしてよ。
ただ、光・闇・炎・地・水・風・氷・雷といった様々な属性を持った
当たらなければ、どうということもないのですわ~。
「フィナーレでしゅわ!」
宙に出現させた
避けられない量の槍だから、ハリネズミになるのかしら?
それとも属性が干渉しあって、大爆発を起こすのかしら?
楽しみですわ~。
「ぜぇはぁ。ち、ちょっと……あたしを殺す気なの? なの?」
「まぁ。あれでもだいじょうびゅなんて、さしゅがでしゅわね。でも、こりぇはどうかしゅらぁ?」
イズンは右手に持っていた炭化して、黒焦げの黄金のリンゴを投げ捨てましたわ。
恐るべし、黄金のリンゴですわね。
いくら手加減はしているとはいえ、大量のジャベリンをまともに浴びながら、肩で息をする程度で済んでいるとは……。
あとは多少、服が汚れて、髪があちこちはねているくらいですわ。
さすがはわたしがライバルと認めた子でしてよ。
でも、これはどうかしら?
「あたちのしゃいだいかりょくをおみまいしゅるのでしゅわ」
右手で最も得意とする氷の極大魔法・
左手で炎の大魔法・
まともに当たれば、命がなくなるどころか、地形と環境まで変わるのですけど……些事ですわね。
具体的にどれくらい熱いのかは分かりませんけど、冷たくしたあとに熱すると多分、楽しいですわ~。
「やめなさいなの~。それは危ないなの~」
何か、聞こえましたけど、風の声ですわ。
あー、聞こえませんでしてよ。
それに発動したものは急に止まりませんのよ?
イズンに着弾しただけではすまなくて、森の一部がちょっとばかり、削れた気がしますけど……。
気のせいですわね。
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