第7話 リップ

 夕食を食べた後、私は言いずらかったが自分の気持ちを正直にお母さんに打ち明けた。


 「お母さん私この子飼いたいの」


 「飼いたいって言ったって、その子がどこまで大きくなるかだってわからないのよ」


 「空が飛べるようになるまででいいから、そしたら自分の力だけで生きていけるもの」

 私は必死に訴えかけた。この子を生かしてあげたいその一心だった。


 「わかったわ、お父さんには私から言っておくわ」


 「ありがとうお母さん」

 私はホッとした。お父さんには後でなんて言われるかわからないけど、お母さんならきっとうまくお父さんを説得してくれるだろう。


 「あなたは一回言い出したらきかないものね」

 お母さんがぼそりと呟いた。「昔からそうだったわ」


 「わがまま言ってごめんなさい」

 私はお母さんに抱き着き謝った。


 「いいのよ。わがままは子供の特権なんだから」

 お母さんはそういうと私の頭を優しく撫でてくれた。


 「ねぇーお母さん、まだこの子の名前決めてないの。何がいいかな?」


 「そうね」


 「私今までペット飼ったことないから、なんて名付ければいいか分からない」

 悩んでいると、ハっとひらめいた。


「そうだ、お母さんは私の名前を付ける時はどうしたの?」


「それはあなたの笑顔がお日様のようだったからよ。あなたの名前は朝日からきてるの。

そうよ、それと一緒で特徴から名前を導き出せばいいわ」


「特徴からか___」

 私は龍の子供をまじまじと見つめ、特徴的な箇所がないか探した。


 「クア?」 

 龍の子供が見つめる私に不思議そうに見つめ返し、頭をぽりぽりとかいた。


 「私決めた、この子リップにするわ。どうかしら?」


 「リップ?」


 「唇が分厚くて特徴的だもの」


 「うふふふ」

 お母さんは可笑しく思い笑ってしまったが、私は大真面目に考えだけになんでお母さんが笑ったか分からなかった。


 「いいと思うわ。リップ、我が家にようこそ」

 そういうとお母さんはリップの頭を撫でた。

 リップもすっかりお母さんに慣れた様子で目はうつろになり、そのまま寝てしまった。 

 私は棚に置いてある空のパン籠を手に取ると、中にクッションを入れ、その上にリップをのせた。風邪を引かないように羽毛のタオルも掛けてあげた。


 「お母さんリップ私の部屋に連れて行くね。おやすみなさい」


 「おやすみなさい」

 お母さんが私とリップを見送ると少し頭を抱えた様子で「さてと、お父さんにはなんて説明したもんか」

 とぶつぶつ言いながらリビングに一度戻り考えることにした。

 

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