第15話三大一族の一人
オークションは時間の経過と共に進んでいき、そして最後のダンジョンアイテムが捌かれた。
「これで、全部捌いたみたいね」
宮古レインドールは立ち上がる。
既に会場は帰宅モードに移っていた。
宮古レインドールは久島五十五の方を見て入り口に眼差しを向ける。
「それじゃあ会場裏にでも行きましょうかあ?」
会場裏。
「先輩ッ!、と…、それと姉さま方」
久島五十五の方に顔を向けて喜びの表情を浮かべた宮古リティ。
その美貌には、うっすらと汗が滲んでいた。一応は、舞台上で待機していた為に、緊張で汗を流していたのだろう。
「ご出席されていたのですか?レインドール姉さま」
薄白色の髪の毛を揺らして、宮古メメがその様に伺う。
「まあ、宮古一族が開催するオークションですもの、ちゃんと、他の人に対して無礼のない様に確認するのは当たり前のことでしょう?」
宮古姉妹に対しても悪女ムーブをするが、宮古ハルメンは咳払いをしながらも彼女に微笑む。
「妹が心配だから、来てくれたんでしょう?」
「あらあ?話を聞いてなかったのかしらあ?」
ガヤガヤと、姉妹が話し込んでいる様を、傍から見ている久島五十五は、微笑みながら眺めていた。
「やっぱり…みんな、家族が好きなんだな…それはとても、良い事だ」
久島五十五は何を感動しているのか、目から涙を流していた。
それを掌で拭った時、宮古レインドールがやって来る。
「ついでにだけど、基本的には会場裏では、出品者と落札者の間で現金と現品の受け渡しがあるわあ、オークションで競り落とした現品は、オークションの終了後に裏で契約書などを通して所有物の証明である証明書を発行したり色々な手続きをするのよお?」
と、説明を交えてくれた。
「それで現在は相手が来るのを待っているってわけか」
この長い通路から、出品したダンジョンアイテムを購入した人間を待つ。
そして、宮古一族は、その人間の姿を確認すると共に、嫌悪感が過る。
「遅れてごめんなさいね…DIを回収するの面倒臭くて、回収屋に連絡してるけど、中々出なくて、取り合えず、契約くらいはしに来たわ」
黒い髪を長く伸ばし、ツインテールにした女性だ。
更に、頭部には髪の毛を丸め込んで、二つのお団子を作っている。
「…貴方は」
宮古メメが、その女性を睨んでいる。
久島五十五は、宮古メメに聞いた。
「知っているのかメメさん?」
久島五十五の質問だが、宮古メメは無視をした。
そして、目の前に立ち、扇子を仰いでいる女性に対して敵意を剥き出す。
「あなたがオークションに来ているなんて…随分と資金がたくさんあるのですね、…大椿一族、
そう言った。
大椿、宮古。
この二つは、三大一族と呼ばれる、有名なダンジョン攻略者の家系であった。
「大椿フェイラン、三大一族の一人にして、現在の久島様の入札額、2億を注ぎ込んでいる人です…丁度良い、何故、関係の無い貴方が、久島様をオークションで競り落とそうとしているのですか?」
宮古メメが笑みを作っているが、何処か歪な表情に見て取れた。
複雑な感情が絡まって、うまく笑みを浮かべる事が出来ていないらしい。
「何故って…まあ、嫌がらせよ」
扇子で自らの口元を覆い隠すと、ほほほ、と笑い声を漏らす。
「それよりも…せっかくお金を恵んであげたのだから、もう少し真面に競りをしててちょうだいね?…じゃないとこれじゃ張り合いなんて全く感じないわ」
大椿フェイランは、宮古リティの方を見ながらそう言った。
宮古リティは、彼女の言葉に苛立ちを覚えた。
「お金を、恵んだ?」
彼女の言葉を反復させる。
宮古リティを見る大椿フェイランは、嬉しそうに笑っていた。
それも、厭らしい、人を見下すような視線で、だ。
「そうよ?オークションで、貴方の出品したDIはすべて、私が競り落としたの、これで、軍資金でも出来たでしょう?だったらそれを使って、早くこの男の入札額を越えさせてちょうだい?」
扇子を口元で覆い、目元だけで笑う大椿フェイラン。
久島五十五の方に顔を向けると、段々と顔を近づける。
宮古一族がピリついた。久島五十五に、無造作に近づいた為だろう。
「ちょっと…何を」
宮古ハルメンが車いすを動かす。
久島五十五にちょっかいを出さない様に、彼の間に割って入ろうと思ったのだろうが。
「何って…見ればわかるでしょ?品物でどこか破損してないか確認しているのよ?ふーん…顔はまあまあ、体つきは?」
細い指先で、久島五十五の腹部を、長い爪で突く。
ぐりぐりと、久島五十五のへそに当たる部分を穿り返す様に動かす。
しかし、久島五十五は動じない。眉一つ動かす事無く、彼女の行動を受け入れる。
宮古姉妹は動かなかった。
それは、久島五十五が手を広げて、手を出すな、とそう告げていた為だ。
だから、宮古姉妹は見守っていた。
「んー…んー…、んん?貴方、ちょっと、顔」
顔と言われ、久島五十五は首を傾げる。
「顔、ですか?」
久島五十五の眼前に、親指と人差し指の爪が、ピンセットの様に先端をカチカチとしていた。
「ちょっと汚れているわね、目を瞑って、其処、瞼にゴミがついているわ」
言われて、久島五十五が目を瞑った時。
…口元に、風が吹いたかと思えば、柔らかな感触。
其処から、生暖かい舌先が入り込んだ。
「ん、ぐッ」
久島五十五は目を開くと、大椿フェイランは、久島五十五にキスをしていた。
そして、口を離すと、指先で、濡れた唇を拭く。
「ははは。引っかかってるっ」
そう笑った。
その嘲笑は、久島五十五に、と言うよりかは、宮古一族に対しての嘲笑に近かった。
案の定、宮古姉妹の感情は沸点に到達した。
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