第31話 輪の国に沢山の情報部

妻であるダーク・ムーンと相談して情報部の設置についてさらに見識を得た司馬 趙謖は長男の馬括の元に向かいました。

馬括の自宅はさすが名門司馬家の頭領の住まいだけあってとても立派な屋敷でした。


もちろん、安全対策も万全です。

馬括はさっそく話をするように促します。

「例の情報部設置の件だな。あれから何か話したいことは増えたかね」


趙謖はダーク・ムーンとの話で出てきた情報部にふさわしい人材の話をしまた。

馬括はそれを聞いて満足そうにうなづきます。

そして、さらに何かあるか趙謖に尋ねます。


そこで趙謖は新たな提案をします。

「情報部の設置について大掛かりな提案があります。それはわれら司馬家にそれぞれ情報部を置くというのはいかがでしょうか?」


彼の提案はこうです。

長男で政治家である馬括には輪の国の国家機関の中に情報部を設置すること。

次男の自分は国家機関の情報部と、以前話に出た司馬家の私設情報部の監督をすること。


三男の信景は民間企業として、彼の率いる商社の中に情報部のような物を作り、管理させること。

そして四男の信頼には輪の国の軍隊の中に諜報部を設置し、彼に管理させること。


こうして、情報戦に弱くスパイ天国と言われた輪の国の情報態勢を強力にすることで輪の国を強くしようというモノでした。

元々、情報部やスパイに理解のある馬括は次男の提案に問題なく賛成しました。


ただ懸念もあります。

馬括はそれを口にします。

「今ここにいない二人、とりわけ信景は大丈夫だろうか?輪の国の民ほどではないが彼も平和ボケしてるからなあ」


趙謖もそれを心配していました。

だからこそ最初に長男の家にわざわざ来たのです。

「では今度は残りの二人にプランを説明してみましょう。私たち二人が説得すれば彼らもいやとは言わないでしょう」


趙謖はそう言って残りの二人、つまり沢山の民間企業の長である三男信景と軍事の申し子信頼と話し合う段取りをすることにしました。


司馬家の人間はみな忙しいですが、その中でも三男の信景は忙しさを極めていました。

民間企業の長として会社を管理しつつ、経営者として他の会社との提携などを決める立場にありました。


とにかく彼にとって軍事意外の将としての活動は天職かというくらい肌が合いました。

とにかく戦国に生まれるべき人物ではなかったのでしょう。


さて、忙しい中でしたが、四英雄が集まるということで彼も時間を空け、会社の貴人応接室でスタンバっていました。

その後、馬括、趙謖、信頼が応接室に入り座ります。


「今日も全員集まって例の情報部の話か?」

すでに信景に話は伝わっています。


趙謖が話を切り出します。

「今の輪の国のような平和ボケした国では情報部の設置は不可欠!さらに言えば規模も相応の物が必要であると思う。ゆえに四英雄それぞれが情報部ないし諜報部を持つのはどうか?」


信景と信頼は少し考える風を装いましたが、意外と早く返事を出しました。

「正直忙しいのだが、いいだろう」

「私も兄に従い諜報部とやらを設置しましょう。我が甲斐の山猿ではないことを示してやりたいし」


馬括と趙謖は意外に思いながらも話が早いのは歓迎なので大いに満足しました。

三男、四男の日本勢も輪の国のあまりに警戒感の無い国の姿を見て、これは危ないと感じたのでしょう。


特にこの場で口には出しませんでしたが、四男の信頼は軍の中にいながら、ぬるま湯のような輪の軍隊を見聞きして、大いに危機感を持っていました。

それを信景に愚痴ることもあったくらいなので、ある意味もっとも情報部の必要性を感じていたのかもしれません。


そして、それを聞いた信景もまた、かつて自分が軍事に今一歩関心を示さなかったために自らが丹精込めて作った小京都を火の海にした過去を思い出したのでした。

こうして四英雄はダーク・ムーンの考えを交えながら各々の情報部と諜報部づくりのための話合いを進めてゆきました。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る