第24話 堅実軍人信頼の嫁探し

さて、大学卒業後からの10年、四英雄最後の一人信頼の歩みを紹介します。

彼は卒業後、防衛省に入り、軍人になりました。

といっても輪の国は約50年戦争がありませんでしたから、かなりサラリーマン化していました。


前世において、天下人をさえ恐れさせた勇将としては物足りないことこの上ありません。

しかし、腐っていても仕方ないので彼なりに組織の中で頑張りました。


彼の前世を振り返ると、老将の言う事を聞かず、若くて経験のない側近の意見に偏り過ぎていたとか、独裁的だったという批判があります。

彼もまた、モブ神との知的訓練によって自分の誤りを誠実に認め、同じ轍は二度と踏まないと誓っていました。


意外と知られていませんが、彼は本来御屋形様ではなく、部将として自分の家に使える立場でした。

なので、組織の中で己を磨くことは苦手ではありません。


事実彼は昇進試験にTOPで合格することも多く、司馬家の威光がなくても、輪の国隋一の軍人になるのは夢ではなかったのです。

ちなみに彼と同期で入省した人物がおり、信頼とTOPの座を争うほどの人物がもう一人いました。


後に信頼の人生に大きく関わる事になる人物ですが、この時は信頼も名前を知るくらいで意識はあまりありませんでした。

一方その友人、仮にXとしましょう。


彼は司馬家に並々ならぬ興味をもって常に監視していました。


さて、信頼は防衛省でトントン拍子で出世し、陸上防衛隊の大佐になりました。

ちなみに輪の国では戦争がなかったため、一番上の階級は准将でした。

つまり、この時に戦争が起きた場合、軍事司令官として最上級が准将であり、大佐はその次ということになります。


さらに付け加えると、大佐は輪の国の軍隊編成の中では最上級の階級ということになります。

実際に軍隊そのものを指揮するのは大佐が最上位ということです。


陸上防衛隊というのはもちろん陸地を守ることになりますが、戦争以外にも自然災害などが起きた場合の救助も彼らの務めです。

世界が戦争を続けているにもかかわらず、災害専用の組織となっていることを信頼は不安に、また不満に思っていました。


さて、司馬家は名門で政略結婚は当たり前の家柄です。

四男とはいえ信頼にも結婚の話が来ました。

それは、彼が卒業してから10年、大佐に就任してからの事です。


相手は海を隔てて西側の「義の国」のヒューマンの令嬢でした。

義の国は経済的には輪の国とよい意味でライバルでしたが、軍事的にはやや敵対関係でした。


理由は大陸を隔てた美麗七州国が義の国をライバル扱いし始めていたために、いま保護国である輪の国と軍事同盟を結び、彼らとの緊張関係を生み出していました。

義の国の女性もまた、色仕掛けを用いることがありましたが信頼は信景と異なりその辺の備えは万全でした。


元々彼の前世の時に、互いに敵対していた三つの国が政略結婚で相互同盟を結んだことも彼の頭にはあります。

何しろ、この時のトラブルが原因で、信頼の兄は甲斐の虎の逆鱗に触れて命を取られています。


この手の同盟について、彼は他のどの英雄よりも詳しい存在でした。

義の国からきた姫はとても気が強い人物でした。

しかし、信頼の武門の英雄の風紀に充てられあっという間に彼に惚れてしまいました。


実は彼女の家は義の国の高官の娘であり、なにかあれば実家に情報を流すように言いくるめられていました。

しかし、先ほど述べたように目の前の英雄に心奪われたために実家の命令を忘れてしまうほどでした。


しかも、他の三英雄が悪知恵を絞って、実家向けに当たり障りのない情報を流すように彼女に提案し、彼女もそれを了承しました。

この作戦に特にノリノリだったのは、策略大好きの次男趙謖と性格の歪んでいる(笑)三男の信景でした。


ちなみにこの姫の名前は美・麗華でしたが輪の国に来て名前は司馬麗華となりました。

蛇足ですが、彼女の名は偶然にも美麗七州国と同じで、その縁もあってか美家と美麗七州国との関係は比較的良好でした。


よって長男馬括の妻、美麗七州国のソフィアとは仲良くなることが出来ました。

こうして四英雄たちはそれぞれ女性関係で落ち着いた所で、運命の日が迫ってきたのです。




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