第3話:遭遇
ここは異世界!俺は転移者!!
答えが目の前にはあった。近付いてみればそれはもう火を見るより明らかだった。
俺って異世界転移した?に対する明確な解答が欲しかった。近付く事でその解答を得る事が出来ると思い嬉嬉として駆け出し今はその解答を得る事が出来た。
降りてきた丘陵の頂からでは遠くて分からなかったが、黒煙付近にはかなり大型の幌付きの荷馬車が有りその荷馬車を中心として50名程だろうか人間が
その合戦の様な事をしている集団に20メートル程の所まで近付いて改めて辺りを見回す。
とりあえずここが遮蔽物の何も無い所で逆に俺にとっては都合が良かったかな
荷馬車の中に人が居るかも知れないがそれは後で対応しよう
数人が俺に気付き目だけをコチラに向けるが、目の前には自分を殺そうとする者が迫り来る最中、顔を向ける事が出来ないのかすぐに相対者へと視線を皆戻し戦闘に集中する。
それはそうだろうと思う。端から見ても真剣勝負で命のやり取りをしている様にしか見えない。
そんな中で集中力を切らせばどうなるかなど、素人である俺でも分かる。
余り近付き過ぎると敵対行動と見做されてしまう事も考えて少し余裕を持って立ち止まる。
兎にも角にもまずは話がしたかった。
なので全員
そう決めて更に集団へと歩を進め、素早くその場にいる全員を
そして補足が完了したのを認識したと自意識でそう思わせ―――実際は認識すらする必要は無いが―――てから自然と口の端を持ち上げる。
まだ集団とは10メートル程離れており、俺の呟きを拾う者は居ないであろうが敢えてその言葉を口にする。
「止まれ」
わー!やー!
ん?あれ?
「と、止まれ!」
わー!わー!ぎゃー!
俺の一番近くでお互いの剣で鍔迫り合いをする戦士風の男2人は必死の形相で一進一退の攻防を繰り広げているが、鍔迫り合いを制し相手を押し返した短髪で茶髪の大柄な偉丈夫はチラリと俺を一瞥すると直ぐに相対者に視線を戻した。
…アレ??
焦り辺りを見回すも、先程と変わらぬ殺し合いの真最中であり剣と剣がぶつかり合う甲高い金属音や何を言ってるか分からない叫びが其処彼処から聴こえてくる。
無意識に俺は前進を止め後退りしていた。
嬉嬉として丘陵を駆け下りて来た時の高揚感や勇み奮う感覚は無く、目の前に大柄な偉丈夫が目に付いていたからであろうか寧ろ山で偶発的に熊に遭遇してしまった時の様な絶望感と焦燥感が自分の中に沸々と湧き出てくるのを感じ取っていた。
初っ端から躓くとは思ってもみなかった…
この
異世界に来てしまったはいいが、身体的な能力は以前と変わらない気がする。
魔法は…使えそうにない。
まだ魔法は使い方が理解出来てないだけって可能性も有るとは思うが…
かなり焦っていた。焦っていたからこれからどうすればいいか解らず、解らないから考えても解らない。
異世界と言う世の男子ならその単語だけで半数くらいは心躍る世界に飛び込んだんだか、飛ばされたんだか分からないが、兎に角異世界に転移したっぽい訳だが、異世界初心者な俺でも何のチートも無く魑魅魍魎が跋扈していそうな、それこそ命がいくつあっても足り無さそうな世界で本当に生きていけるのかと甚だ疑問だった。
いや待てよ…
前世界の知識を駆使して生産者などとして生計を立てると言うのも有りかもしれない
イケそうな気がする
前世界ではそれなりに知識は
ただ、折角異世界に来たんだったら剣で魔物を斬り斃し、魔法で敵の大群を薙ぎ払い蒼空を翔け、眉目麗しきエルフや獣耳が愛らしい獣人や亜人の女性とキャッキャウフフ的な何かのイベントが巻き起こる。そんな異世界ライフがいいと思った。
だって異世界だよ!?
異世界転移って言ったら絶対そういうの想像す―――ん…?
あ、異世、界っ!?
ここまで来て漸く重大な事実に気が付く。
そうだよ、ここは異世界なんだ!
言語なんて暫く自分の
其処に思い至るともう目の前の景色は眩いばかりに光り輝いて見え、世界に祝福されているが如く心が幸福感と安堵感に満ちてゆく。
つまりだ。
神様ありがとぅ!
そうと分かればやる事は一つ!!
頭も高速フル回転である。辺りを見渡し直ぐに荷馬車へと目が行く。
かなり大きな荷馬車だ。幌付きで中は大人が数人立って小躍り出来そうなくらいはある。
荷台の外側の側面には映画や漫画でしか見た事の無い様な大きな樽が三つ並んで装着されている。
たぶん反対側も同じだと推測出来る。
そんな大きさなので荷台を轢く馬も二頭以上は必要そうに思うが―――
いやぁ、黒●がいるんですよ、●王が
ばんえい競馬の胸筋ムキムキの暴れ馬と中山大好きなサラブレッドを足して3掛けしたくらいのもの凄いのが荷台を括り付けてそこに居た。
黒●号のすぐ傍では人間が切った張ったを繰り広げている訳だが、そんなの意に介さず足元の草をムシャムシャと食べていた。
正に覇者が駆るに相応しい威風堂々とした佇まい!きっと人間の頭蓋なんか簡単にプキャッと踏み潰してしまうに違いない。
おっと、そんな事は今はどうでもいい――
――この戦況を丘陵の頂から俯瞰して見た時も、今現在近くで見ていても一方の勢力が荷馬車を護る様に人員が展開して状況に対応している様に見える。
つまりは荷馬車に護衛対象者か或いは護衛対象物が存在すると言う可能性がある。
もしそうならば荷馬車まで抜かれて護衛対象の人物が殺されるなり物を奪取されるなりしたら守備側の負けが確定してしまう訳で、そうなると荷馬車を直接護衛する人員は配備していると考えた方が良いだろう。
そしてそんな最後の砦を護る人員は所謂指揮官だとかそう言った存在が就くのではと推測したりする訳だが、それは即ち護衛対象が人だった場合は直接護衛する人員は
だって護衛対象が高貴な身分の者の直接の護衛はそれなりの身分の者等が行うのかもしれないなとアニメ脳な俺は考える。
異世界だけに貴族なんて者も居るかも知れないし、そうであったならばその護衛対象や直衛に就く者は高度な教育を受けている可能性が高い。
もしそうであるならば一気にこの世界の知識と言う
そこまで考え今はそれは良い――
――と敢えて思料を止め、まるで肉食獣が獲物に狙いを定めて音も無く背後から忍び寄るが如く少し身を屈め眼を細め荷馬車付近を観察する。
すると幌の出入口付近に小楯を右腕に装備し、革鎧に身を包んだ濁色めいた金髪の男が目に入る。
男は仕切りに辺りを見廻し相変わらず何を言ってるか解らないが大声で辺りに指示を出している様に見えた。
こいつだな
異世界初心者な俺から見てもここに居るこいつ等は騎士と言う感じはしない。
騎士って言ったらやっぱり全身鉄鎧に身を包んで大きな鉄盾を持っていたり、長剣を胸の前に掲げてジャキンッとかやってるイメージだ。
だが目の前のこいつらは革鎧に身を包み戦い方もなんと言うか泥臭い。
異世界風に言うと冒険者と言うものじゃなかろうか。そんな冒険者に指揮官と言う者が存在するかどうかは分からないし、イメージ的には冒険者は異世界の騎士に有りがちな形式張ったものや柵を嫌う傾向に有る様に思えるので冒険者の指揮官なんてのはあまり想像出来ない。アニメ脳で考えればだが。
ただ、この金髪の男は明らかに周りに対して指示的なものを出してるが、騎士で無いとするなら冒険者パーティーのリーダー的な存在だと思えばしっくり来る気がした。
そんな事を思いその金髪の男に集中する。脳の構造違い等の懸念を逡巡するがその不安も杞憂に終わる。
刹那の時には既にこの世界の又はこの地域?国?限定かもしれないが異世界言語を自分の
おっと言い忘れてた
俺、
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