SYLPH THE ETERNAL ~想いを伝える明日へ~
小林汐希
prologue 未来からのAIR MAIL
第0話 はじめましての手紙
親愛なるあなたへ
はじめまして。そして読んでくれてありがとう。
わたしはいま、この手紙を星間連絡船の中で書いています。
わたしから、ひとつ聞いてもいいかな……。
もし、生まれ育った場所を離れなければならないとしたら、どう思う?
それもね、帰ってくることはほとんどできない。そこにいることは許されない……とか、そんな条件でね。
もうひとつ、生まれ育った星やコロニーを移らなければならないというようなスケールでね。
いま、これを書いているわたしもそのうちの一人。
知らないところに行くのは不安じゃないかって?
もちろん、不安はいっぱい!
それでもね、わたしの居られる場所や理由がなくなってきたな……って思っていたのも大きな理由のひとつだった。
悩んだけれど、それより期待とか憧れのほうが大きいから、片道のきっぷを選んだよ。
だって、これからわたしが新しい生活を始める場所は、なにかを持っていなければ受け入れてもらえないはずだから。
そして、そこはわたしを受け入れてくれると答えをくれた。
初めて、誰かに自分を認めてもらえたような気がした。
むしろ、「待っていたよ、早くおいで」と言ってくれているようで……。
なにかが何なのかはまだ分からないけどね。
一つだけの手荷物を持って、船に乗り込んだときに思った。
ここに再び来ることはあるかも知れないけれど、そのときはお客さんでしかなくなってしまうのだと。
そう言えば、数日前の夜に不思議な夢を見たっけ。
準備もほとんど終わっていたわたしだったけれど、なかなか寝付けなかった夜。
故郷を発つ引っ越しを前に緊張していたのだと思う。
そんなとき、スクリーンでしか見たことがない真っ青な青空の下にいたわたしの前に、一人の女の人が現れた。
見たことがある人じゃない。それなのに、どこか懐かしい気もする……。
わたしに向かって、その人は言ってくれた。
「伝説の女の子が、奇跡の星に迎えられて、素敵な人達と出会って、これから新しい物語を創っていくのだから、心配しなくていいのよ」と。
伝説の女の子……? わたしはそんな子じゃない。
そう頭を横に振ったわたしのことを、その人はふんわりと抱きしめてくれた。
「あなたは一人じゃないから、絶対に大丈夫」
そのまま腕の中で目をつぶって……、気がついたら朝が来ていた。
でも、言ってもらったことははっきりと覚えていた。
周りに夢の中の事を話しても信じてもらえないだろうから、黙っていたよ。
「あれは何だったのかな……?」
今こうして、一人で船の部屋から見える星たちに問いかけても、もちろん答えは返ってこない。
でもね、あの言葉の中で一つだけ当たっていることがある。
今からわたしが向かう星は「奇跡の星」と呼ばれていること。
そして、これまで多くの人たちが望んでも叶うことがなかったそこに行くことをわたしが許されたこと。
それなら、わたしが「伝説の女の子」なのかは別として、その先も当たっているのかもしれない。
船の外に広がる、無限とも言える星たちに比べたら、わたしの存在なんて本当に砂ひと粒より小さい。
でも、その星たちが見守ってくれているように、背中を押してくれているようにも思えた。
これから素敵な人達と出会って、新しい物語を創っていく。
これが本当ならいいな……。
最初から後ろに戻ることは出来ないのだから、この言葉を信じて前に進むしかないよね。
大丈夫。きっと。
ゆっくりかもしれないけれど、新しい物語を書いていくから、見守っていてくださいね。
わたし、頑張ってみるから……。
西暦2350年
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