第3話 魔術の先生

レティシアが14歳になった年、

初めてレティシアのために先生が呼ばれることになった。


魔力があるものは学園に入る前に魔力操作を覚えておかなければいけないからだ。

レティシアを放置している義母でも、さすがに貴族の義務は忘れていなかった。


もうすでに魔力操作を完璧にしているレティシアだったが、

より高度な魔術を教えてもらえるかもしれないとわくわくしていた。


魔術の塔の魔術師に弟子入り修行していたこともあるというレギラン先生は、

レティシアを見てすぐに他の令嬢とは違うことに気が付いた。


「君はもうすでに魔力操作ができているように思うが、

 誰かに教わったことがあるのか?」


「最初は独学で使い始めました。

 その後、魔術師に出会う機会があって、何度か教えてもらっています。」


「ふむ…よほど良い師に出会えたのだろう。

 これほどの魔力を完璧に制御できているというのは素晴らしい。

 その師に教えてもらうことはできなかったのか?」


「その魔術師はたまに会えた時に教えてもらっていただけで、

 どこの誰なのかもわからないのです…。」


「あぁ、気まぐれな魔術師が多いからな。それも仕方ないか。

 魔力操作は教える必要が無いから、どのくらい魔術が使えるか確認しよう。

 部屋の中ではなく、広いところで始めたほうがよさそうだ。」


「では、庭へ案内します。」



魔術を使用するのに屋敷の中では危ないと庭へ移動したところ、

暇を持て余していた双子に見つかってしまった。



「レティ、何をするの!?」


「私もやるわ!」


目を輝かせた双子にダメということもできず、一緒に魔術を習うことにしたのだが、

アリスとセシルは魔力の器が小さく魔力も少なかった。


魔力の流れを感じさせようと先生とレティシアが手を取って魔力を流すのだが、

才能がないのか双子には全く感じ取れない。


そんなことを先生が来るたびに繰り返し、レティシアの授業は進まなかった。

レティシアだけ高度な魔術を教えられて使っていると、

アリスとセシルがずるいといって騒ぐからだった。


そんなレティシアに先生は気の毒になって魔術書を渡してくれた。

その日から双子が寝た後レティシアはこっそりと魔術の練習をするようになる。

先生に直接教えてもらうことはできなかったが、

新しい魔術を習得することができてレティシアは満足していた。



だが、そんな日々も長くは続かなかった。

レティシアのために呼ばれた先生ではあったが、

アリスとセシルから


「魔力なんてわかんない!」


「もうあの先生来なくていい!」


そう報告を受けた夫人は先生を辞めさせてしまった。

レティシアのために先生を呼んだということを忘れてしまっていたからだ。


伯爵へと先生が書いた報告書には、

レティシアの才能はこの国一番になれるかもしれない、

早くもっといい先生に頼んだほうがいいとあったのだが、

屋敷に帰ってくることも少ない伯爵が読むことは無かった。


途中で辞めさせられた先生は、きっともっといい先生に頼むことにしたのだろうと、

レティシアの成長を見届けられないことを惜しく思いながらも身を引いたのだった。


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