ミラの小説

揚げみかん

王様

 王様は言いました。

「民を幸せにできる者はおらぬか」

 ある人が、名乗りを上げました。

 王様は、その人を王様の次に偉い人にしました。

 その人は、自分の家を新しく作らせました。

 その人の家ができました。

 見ていた王様は言いました。

「この人には任せられない」

 王様は次の人を探すことにしました。

 

 王様は言いました。

「民を幸せにできる者はおらぬか」

 ある人が、名乗りを上げました。

 王様は、その人を王様の次に偉い人にしました。

 その人は、ご馳走を用意させました。

 その人はおいしそうに食べました。

 見ていた王様は言いました。

「この人には任せられない」

 王様は次の人を探すことにしました。

 

 王様は言いました。

「民を幸せにできる者はおらぬか」

 ある人が、名乗りを上げました。

 王様は、その人を王様の次に偉い人にしました。

 その人は、綺麗な服を作らせました。

 その人の綺麗な服ができました。

 見ていた王様は言いました。

「この人には任せられない」

 王様は次の人を探すことにしました。

 

 王様は言いました。

「民を幸せにできる者はおらぬか」

 ある人が、名乗りを上げました。

 王様は、その人を王様の次に偉い人にしました。

 その人は、立派なベッドを用意させました。

 その人はずっと寝ていました。

 見ていた王様は言いました。

「この人には任せられない」

 王様は次の人を探すことにしました。

 

 王様は気づきました。

 誰に任せても民は幸せになりません。

 任せた人は皆、自分勝手でした。

 他の人の仕事が増え、民は少しづつ、幸せじゃなくなっていました。

 王様は気づきました。

 誰にも任せなくていいと。

 

 王様は何も言いませんでした。

 王様の次に偉い人はいません。

 民は幸せになりません。

 民は不幸にもなりません。

 

 王様は何も言いませんでした。

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