第2章 魔術師の章(エリックルート)
第1部
第8話 エリックを護衛に
「じ、じゃあエリックくんにお願いしようかな…!」
「えっ!??」
私の言葉にエリックくんがビクッと肩を震わせると私の方を見た。心底驚いた、というような様子だ。
あれ、もしかして嫌だったかな。
「あ…、嫌なら別に…」
「い、嫌なんかじゃないです!!た、ただその、僕が選ばれると思っては無かったのでびっくりして、というかぶっちゃけ絶対ないと思ってぼーっとしてましたし…」
ぼーっとしてたんだ?
エリックくんはバツが悪そうにしている。
そんなエリックくんを見てエドガーくんが不満そうに顔を顰めながらエリックくんの言い訳に口を挟む。
「…、魔術師じゃあ護衛なんて手に余るんじゃねえの?」
エリックくんはむっとしてエドガーくんを見た。
まずい、また喧嘩になっちゃう。
「そんなことないよ、エリックくんは頼りになるし、その、弟みたいで癒されるし!」
「お、弟…」
私が一生懸命エリックくんを庇うと、エリックくんが何故かがっくりしていた。
エドガーくんがそれを見て笑いを堪えてる。あれ、何か変なこと言ったかな。
「まあ、やってみたらいいんじゃねーの?ぴいぴい泣きついてきたら代わってやるよ」
「はあ!???上等ですよ!!!僕一人でジューブンだって見せつけてやります!!」
エドガーくんをエリックくんがキッと睨みつけた。
それを見てコルネさんが苦笑いをする。
「まあ、じゃあこれで決まりだね、エリックくん、宜しくね」
「任せてくださいっ!!!お姉さんに護衛としても男としても認めさせて見せます!」
エリックくんはどーんと胸を叩くような仕草をしてそう叫んだ。
「後半のはいらないかな」
「余計なことをしでかしたら叩っ斬る」
コルネさんが棒読みで言葉を発した直後、すらっとギンくんが刀の鞘を僅かに抜いて刀身を見せながらエリックくんを一瞥した。
エリックくんが刀を見てヒェッと小さく悲鳴を上げる。
「せ、先輩たち僕に厳しくないです?????」
うーん…仲良し…なのかなあ……?
エリックくんはコホンと咳払いをして、
「…、とりあえず僕は実家に戻って悪魔の呪いとかについて調べたいんですけど。とりあえず解ければ儲けモンですし。専門書もたくさんありますから。もちろんお姉さんも一緒です♡ふふふ、親に紹介しちゃいましょうかね♡」
そう言った直後にニコニコしながら私の両手をギュッと握る。
「うん、後半のはいらないかな。…まあエルちゃんがいいならいいけど」
「親に紹介?」
「君の家で悪魔について調べることだけに関してだよ…」
きゅるんととぼけた様子で純粋な瞳を向けてくるエリックくんに対して、コルネさんが少し呆れたようにしている。
「わ……、私はどうせ暇だし大丈夫だけど……」
私がそう言うとコルネさんは頷いた。
「そっか、分かった。エドはどうする?」
「俺も実家帰って資料漁ってもいいか?クロードが封印した悪魔についてのやつ。悪魔退治のヒントになるかもしんねーし」
「クロードが封印した悪魔か、まあ調べておいて損はないね、エドの家の書庫は広いから僕も手伝うよ、っと、今日は夜番だから明後日以降になるけれど」
「おう、たすかる。まあ2、3日かければ充分だろ」
「俺は教会のことを調べよう。街で聞き込みを中心に」
「うん、ギンくんも宜しくね」
どうやら他の話も纏まったらしい。話が終わると、エドガーくんがふーと長いため息を吐いてエリックくんを横目で見た。
「つーかいつまで手ェ握ってんだエロガキ!!!!」
何かと思ったら、エドガーくんはエリックくんの手首をずびしっ!っとチョップした。
エリックくんがぎゃあと手を引っ込める。
というか、私もすっかり忘れていたのでびっくりした。
「痛ァ!何するんですかぁ!」
「コルネやっぱりこいつと二人は危険じゃねーの!???」
エドガーくんがびしっとエリックくんを指差すと、コルネさんが頭に片手を置きながらため息を吐いた。
「もう決まったことだから落ち着いて」
コルネさんがエドガーくんを宥める横でエリックくんは自分の手首をすりすりしながらぷりぷり怒っている。
「ふふん、往生際が悪いですよぉ、先輩。先輩はきゃっきゃうふふラブラブしてる僕たちを遠くから見てハンカチでも噛みながらむきーってしてればいいんです!」
きゃっきゃうふふラブラブとは?
「偏った知識で煽るのやめようね…全くもう、仲良くできないの?二人は…」
「「無理だな(ですね)」」
ハモった。
「息はピッタリなんだけどなあ」
コルネさんの言葉には私も同意。息は本当にピッタリだ。
「同族嫌悪というやつか」
「誰が同族だふざけんな!!!」
「こんなのと同族にされるくらいなら豚のほうがマシですね!!!!!」
ギンくんの言葉にエドガーくんとエリックくんが即座に拒否反応を起こす。ギンくん火に油を注ぐのをやめて。
なんだと!なんですか!とぎゃーすか言い合いを始めてしまった。
「ふ、二人とも落ち着いて…、はあ、もう何でこうなっちゃうかなあ…」
コルネさんが頭を抱える。
うん、この二人は本当に打ち解けるのには時間がかかりそうだなあ…。
最終的にはギンくんが二人を強制的に部屋に引きずって行って事態は収束した。
……かのように見えて部屋でもごちゃごちゃ喧嘩していたけれど。
うーん…こんなんで私ゆっくり眠れるかなあ…。
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