第4話 コルネット・クラーク
「よーし!」
私は今張り切って台所に立っている。
これから晩御飯を作るつもりだ。
一人で暮らすようになってから料理はする様になったけれど五人分作るなんて初体験。
なんかドキドキする。
するとひょこっとコルネさんが顔を出した。
「僕、料理得意なんだ。手伝うよ」
「えっ、いいですよ。これくらい」
「いいの。手伝わせて。お願い。ね?」
コルネさんがじっと私を見つめる。
「う、わ、分かりました」
少しの沈黙のち、私は折れた。
お願いはやっぱり卑怯だ…。
背が高くてカッコいいけど、雰囲気が柔らかくて優しそうで、なんだか大型犬みたい…。
「敬語じゃなくていいよ。堅苦しいから」
「あ。でも、年上、なので」
「ひとつだけでしょ。気にしなくていいよ?ね?」
「……うん」
なんだか歳上の人との距離が分からない。
フロスト神父としか話さなかったから余計だ。
いや、同い年でも歳下でも変わらないか。
「野菜切るね」
コルネさんがジャガイモを手に取る。
「あ、うん。ありがとう」
「今日はカレーかあって買い物しながら思ったよー。楽しみだなあ」
「一人暮らししてから余っちゃうからあまり食べたことなくて。せっかくだから…」
「そっかそっか、なるほど~」
コルネさんは手際よく野菜を洗って、手際よく切っていく。プロ並みの手捌きに圧巻された。
本当に料理得意なんだなあ。
「カガリくんやトイくんとは話した?」
「あ…、うん。二人とも優しい人で…。あ、あとコルネさんとエドガーさんが幼なじみだって言ってた」
「ああ、うん。そうなんだ。父親が仲良くて、その繋がりでね、色々あって」
「色々?」
「エドはね、クロード以来の“神の子”なんだよ」
「神の子…?」
聞き覚えがない言葉だ。
「神に生まれつき愛された子供。生まれてすぐ高い神力を持ってて、奇跡で怪我も治せちゃう。魔を祓う力も段違いなんだ」
「そうなの…!?」
エドガーさんって威張ってるだけあって、本当にすごい人なんだ。
「でもね、それで必然的に跡継ぎになったせいでお兄さん達から嫌われちゃって。僕がエドのお兄さん代わりだったんだ。まあ神の子を見守るみたいな役割もあったけど」
「そうだったんだ…」
エドガーさんも色々大変なんだ。
特別な力を持ってるからって良いことばかりじゃないんだろうなあ。
嫌われたってことは、お兄さんは家を継ぎたかったんだろう。
「コルネさんも神力?使えるの?」
「うん?使えるよ。僕は並程度だからエドみたいに直接魔物に力をぶつけたりはしないんだけど…」
エドガーさんそんな戦い方してるんだ?
「僕の場合は神力を込めた弾丸を作って、神力を込めた銃に装填して使ってるよ。神力が少なくて済むから便利なんだ~」
「刀とか銃とか、色々な戦い方があるんだね…」
コルネさんが切った野菜をざるに上げる。
私がお肉を切っている間に野菜を炒め始めた。
ちなみにカレールーは買ってきたカレーペーストを使う。
「まあね。人それぞれだよ。……ああ、そうだ。それにしてもごめんね急に一緒に住むなんてびっくりしたでしょ?」
「それ、エリックくんにも言われた」
私がふふっと笑うとコルネさんもそっかぁと笑う。
「びっくりしたし今でも不安だけど、エリックくんもギンくんも頼もしかったし、少し頼ってもいいのかなって…」
「うん。頼って。むしろ僕なんて雑用だってするからこき使っていいよ~?」
「そ、そこまではちょっと」
ただでさえタダ働きなのに申し訳なさすぎる。
「ふふ、エドとも話してみてよ。あんな態度だけれど本当はいい子だから」
「エドガーさんと?」
「うん。あ、エドのこともエドガーくんて呼んであげて。それと敬語も他の子に使ってないなら嫌がると思うよ。仲間はずれにされたーって。大丈夫、怖い子じゃないから」
よろしくね。とコルネさんが笑う。
コルネさんにとってエドガーくんはきっと大切な家族みたいなものなんだろう。
確かにお兄さんっぽいっていうか、保護者っぽい。
「そういえば、あの三人は仲悪いのかな…?」
「ええ?ああ、まあ…エドが意地っ張りだからねえ…あんまり二人とは馬が合わないみたい?カガリくんとは性格が合わないし、トイくんのことは魔術師だから嫌ってて」
やっぱり。
エドガーくんがエリックくんと仲が悪いのは魔術師だからなんだ。
「魔術師が嫌われてるって、エリックくんに聞いて私初めて知った」
「…ああ、そうだね。うんでもエドの場合は神の子だからって魔術師に殺されかけたこともあって。そのせい」
「殺されかけた…?」
「魔女・魔術師協会っていう組織があるんだけれど、そこは宗教や現国王を嫌ってて…そこの魔術師にね」
魔女・魔術師協会…?そんなのもあるんだ…。
「エリックくんは協会を嫌ってるし、魔術師が全員悪い訳じゃないってエドも分かってるはずだけどどうにも素直になれないみたい」
コルネさんは困ったように笑う。
「魔法自体には興味があるみたいだよ。今朝だってトイくんが魔法で飛ぼうかなって言ったら俺も連れてけって言ってたし、今回をきっかけにトイくんやカガリくんと友達なって欲しいなあ」
「友達…」
そういえば私も友達なんていたことないなあ。
そうこうコルネさんと話しているうちにカレーは出来上がった。
久しぶりのカレー。美味しく出来たかな。
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