大嫌いな幼馴染みと一緒に、×××しないと出られない部屋に閉じ込められた
和鳳ハジメ
クエスト1/セックスしないと出れない部屋
「何でこーなってんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!?」
「嘘でしょッ? は? ありえない、ありえないからこんなのッ、どうして、どうして――ッ!?」
静かな部屋の中に、年頃の男女の困惑した叫びが響きわたった。
然もあらん、目覚めてみればラブホの様な内装の部屋に。
それもキングサイズのベッドの上に、二人仲良く寝かされていて。
外へと続くと思しき扉の上には、デカデカと大きな文字が印刷された看板が。
『セックスしないと出られない部屋』
二人はそれを信じられない様な目をして、何度も読み返し。
(――セックスしないと出られない部屋って何だよっ!? は? そうか、オレはまだ寝てるのか? 夢、そうだよ夢だよな? そうだって誰か言ってくれ!!)
(待って、ホント待って、あり得ない、マジありえない、よりにもよってコイツと、アキラと一緒にこんな部屋に居るだなんてっ!!)
そう『セックスしないと出れない部屋』である。
こんなものはマンガやネットの中にしかない、くだらない猥談、妄想の類ではないのか。
だが、現実に目の前にある。
(何だよコレ……、マジでどーなってんだよ、夢じゃないって確信してるのが一番変なんだよ、頭が狂っちまった気分だぜ!!)
(ええっと……確か昨日はアキラとボドゲで勝負したまま寝落ちして…………)
(――――待て、待てよ? そういや理子は昨日オレにボコボコに負けてたよな。…………これはアレか、復讐か、ドッキリサプライズか。押し倒したら最後、誰かが入ってきてオレが弱みを握られるヤツか)
(まさか、うん、そう、まさかではあるけど……、もしかしてコイツ、性欲に負けて理由を付けて合法的にセックスしようと企んでるんじゃっ!?)
ギロリ、二人は同時に睨みあって。
男、日に焼けた背の高い高校生、田仲 彰(たなか・あきら)はゴクリと唾を飲む。
女、ショートカットで釣り目の巨乳なセーラー服美少女、鈴姫 理子(すずき・りこ)は右手を握りしめ。
「――――この卑怯者、こんな大がかりなコトしないと幼馴染み一人満足に押し倒せないワケ? 失望したわ、あーあ、こんな幼馴染みでわたしはホント不幸だわぁ」
「白々しいぜ理子、テメェが仕組んだんだろうが。うっかり転んで押し倒したらそれを写真に撮って脅迫するつもりだなッ!!」
「はぁっ!? 言いがかりはよしてくれない? 誰がアキラなんかとセックスするもんですか!! ホント嫌いっ、大嫌いよあんたなんか!!」
「それはこっちの台詞だ、テメェなんて大っ嫌いだッ! 幼馴染みじゃなきゃ話し相手にすらゴメンだね!!」
なにさ、なんだよ、と威嚇しあう二人。
そう彼らは幼馴染みである、田舎育ち故に遊び相手がお互いしかおらず。
出会った時から玩具を巡って喧嘩する仲、成長しても変わらず、オヤツを取り合って口喧嘩、ゲームの勝敗で手が出る足が出る。
(ホントマジで誰の仕業なんだよッ! コイツがこんな事するわきゃねぇし、つーか今更コイツとセックスしろとか嘘だろ? 異性に見れないっての!)
(この反応……やっぱりアキラが犯人の線は消えた……でも、そうなるといったい誰がこんなコトを。いや無いから、だってアキラよ? お互いのおねしょした数まで知ってる相手と今更セックスとか、マジでないわーー)
(ま、百歩譲ってだな。理子の方からセックスしてくださいって言ってきたら? そりゃ考えない事もないけどよ…………顔を体と家庭的な所と意外に成績良い所は確かに取り柄だし??)
(土下座、そうねアキラが土下座したらセックスしても良いわ。――――大学卒業ぐらいにコイツに恋人いなかったら、お情けで、仕方なく、かなり嫌だけど付き合ってあげるつもりだったし?)
理子は学校でも評判の美少女だ、それに長く一緒にいるからこそ。
内面の良さも、アキラは一応なりとも評価していて。
彼は農作業の手伝いで鍛えた、見かけより逞しい体をしている。
童貞の癖にチャラい男という雰囲気で、全くモテていないが彼女から見れば悪くない。
(――――冷静になれオレ、本当にこれは現実なのか?)
(落ち着くのよ、もし夢だったら……わたしはアキラのコトを……)
ごくりと唾を飲んだのは、果たしどちらだったか。
何を言えばいい、何かを言えば喧嘩腰にしかならない、どうしてこんな事に、どうすれば脱出できるのか。
二人の思考が混沌してきた瞬間であった、突如として光の柱が部屋の中央に降り注いで。
「ッ!? 後ろに隠れろ理子ッ!!」
アキラは咄嗟に彼女を背に、不可解な現象と対面する。
――まるであの事故の時のように、バチっとスイッッチが切り替わる感覚。
「何だか知らねぇけどな……理子には手を出させないぞ」
目の前の現象は明らかに異常だ、普通の高校生であるアキラに何が出来るのか。
だが今は、そんな問題など考えている暇などない。
「くそッ、何が来る、何が起きる――ッ?」
例え己が殺されそうとも、せめて幼馴染みだけは。
少しでも無事で、少しでも命を長らえさせる為に。
拳を握りしめる、宇宙人かそれとも人間か。
(理子はオレが守る、命にかえても)
大嫌いな幼馴染みだ、だが一緒に育ってきた、常に隣にいる大切な幼馴染みでもあるのだ。
男として、せめて彼女だけは。
(アキラ……もうっ、アンタってヤツは――――!!)
彼の後ろ姿に、彼女は唇を強く噛んで。
胸がキュッと甘く締め付けられるのを自覚したが、嫌そうに顔をしかめて彼の前に出る。
大嫌いな幼馴染みだけれど、でも。
「あッ、おい理子!?」
「――アンタこそ後ろに隠れてなさい!!」
「は? テメェ状況が分かってんのかよ!! 素直に庇われてろ!!」
「はぁ~~~?? 頭沸いてるのあんた? アホなアキラに何が出来るってのよ??」
「喧嘩売ってるのか理子? ん? 買うぞ? 遠慮なく買うぞ?」
「あら奇遇ね、あの変なのをどうにかする前に喧嘩でもする?」
異常事態にも関わらず喧嘩し始める二人、だがその中から聞こえてきた拍手に思わず静止して。
「いやー、仲良くてオッサンは尊みで死んでしまいそうやわ。お二人は天使泣かせやでぇ!!」
「え? 誰? 天使? は? いやオッサン? テメェが犯人なら今すぐ部屋から出せ? ぶっ殺すぞ??」
「待ってアキラ!? コイツの足下よく見てっ!? なんか浮いてるわよっ!? タイガースを応援しながらビール片手に枝豆食べてそうなオッサンなのにっ!! 宙に浮いてるし頭に輪っかあるし羽があるわよっ!?」
理子の悲鳴のような叫び、自称天使なオッサンの姿にアキラも戦慄する。
このビール腹の変な中年男性は何なのだろうか、神々しさを感じるのがなお悪い。
中年男性は二人の様子に、とても満足そうに頷いて。
「いやー、いきなり拉致ってすんまへんなぁお二人さん、あ、自己紹介がまだでしたね、オッサンの事は天使のオッサンとでも呼んでくれてかまへんよ」
「テメェの様な天使が居るか!! とっととオレらをこの部屋から出せッ!!」
「そうよそうよ! あたしんチもコイツの所も只の農家なんだからね!! 身代金なんか取れないわよ!!」
「そうカッカッせんと、ね? オッサンの言うこと聞いてくれんか? あんさん達も理解してるでしょ、――オッサンが本当に天使で、セックスしないとこの部屋から出られない事は」
「「…………」」
天使のオッサンの言葉に、二人は顔を見合わせて黙り込んだ。
そう、頭では理解していた。
否、正確には本能と呼ぶべき何かが訴えていたのだ。
目の前の存在には逆らうな、言葉は本当だと。
「んんっ、ご理解頂けて嬉しいですわ。ほな説明いくでー……と言っても、簡単な事なんやけどな」
そう言うと、天使のオッサンは宙に人口比や出生率のグラフを表示する。
まるでサラリーマンがプレゼンするような光景に、二人は何とも言えない表情で説明を聞き始めた。
「この日本の出生率が減少してるのは知ってますやろ? やからウチの上司……つまる所、人間はんの言うところの神様がな、こうオッサン達みたいな使いパシリに言うたんや――どんな手を使ってでも人を増やせ、ってな。オッサンはその中で日本担当の一人やねん」
「うごごごご、し、信じたくないのに強制的に信じ込まされて気持ち悪いッ!? これどうなってんだよオッサンッ!?」
「人間はんはオッサン達天使と同じ神様が作りはったんやけど……、まー、オッサン達は神様方により人間はん達より上の権限を与えられてる的な? 人間はんは顧客で、オッサンは店の店員、神様方は会社そのものと言えば分かるかいな?」
「ううっ、色々と疑問はあるけど。何であたし達がこうなってるの? 何でコイツとセックスしなきゃならないワケ??」
理子の疑問に、天使のオッサンは待ってましたとばかりに頷いて。
「オッサンの趣味や!! オッサンはなぁ……くっつきそうでくっつかない幼馴染みにラブイベントを与えて恋人にするのが趣味なんや!! ちなみに、お二人さんこのままだと恋人にもなれんと独り身で終わる予測結果が出とるで? けど安心してや!! この『セックスしないと出られない部屋』から脱出した暁には子沢山&裕福で幸せな未来が待ってるんやで!!」
「うおおおおおおおおおおっ! マジか!! ウッハウハじゃねぇかフザけんなオッサン!! コイツとセックスするなら独り身で終わってやる!!」
「そうよそうよ!! 何か悲しくてこんな男とセックスしなきゃいけないのよ!!」
「うんうん、その感じ好きやわぁ……。こう、ね、ここからどう恋人になって行くかを考えただけで幸せエネルギーを充填できるってもんやで。あ、幸せエネルギーってのはな? オッサンや神様方が生きていくのに必要なエネルギーで、ああ、最近には尊みが深いみないた言い方の方がエエんか??」
「知るかバカ!! 天使っつーならさぁ、もっと他に方法ねぇのかよ!!」
「ああ、時間停止能力や洗脳アプリの方が良かったでっしゃろか? 実はAVやマンガのやつのイチャラブ系ハッピーエンドのやつは事実なんやで?」
「マジでッ!? 時間停止AVの一割が本当ってジョークじゃなかったのかよッ!?」
衝撃の真実に瞳を輝かせるアキラ、男の子としてとても夢のある話だ。
もうこれだけで理性も、目の前のオッサンを天使認定しても良いとすら思う。
そんな彼とオッサンを、理子は冷え冷えとした視線を送り。
「どうしてこうエロに偏ってるワケ?? もっとマシなのないの? アキラが好きな少女マンガみたいにさぁ……」
「しれっとオレの趣味をバラしてんじゃねーぞクソ女?? テメェなんてボドゲが趣味じゃねぇかよ、相手いねぇからオレが相手するしかねぇじゃねぇか」
「……は? 喧嘩売ってんのアキラ?」
「それはテメェだろ?」
これだから大嫌いなのだと、お互いを睨んで拳を握る二人。
天使のオッサンはまたも満足そうに頷いて、何もない所からタブレットを取り出して差し出す。
「まぁまぁ落ち着きんさいお二人さん、今はセックスする気がない、それでもエエんです。細かいルールはこのタブレットで把握して頂戴ね、ほなまた、クリア後に会いましょ!」
「あ、ああ……って、消えやがったアイツッ!?」
「えぇ……天使がタブレット……?? というかルール? ルールって何?」
残された二人は、困惑のまま立ち尽くしたのだった。
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