第5話 少女救出
「くそおーーー」
少女が一人逃げ遅れて転んで泣いている。
警官はそれを救おうと車を盾にして発砲している。
だが銃は鎧野郎には効いていない。
今の俺なら助けられると思う。
たぶん少女を抱き上げれば透明になるはず。
なぜなら、今着ている上着は透明になっている。
俺以外の物が消えないなら、裸にならないといけない筈だ。
だが、服が消えるということは、少女を抱き上げ体に密着させれば、少女も消えるはず。
「……」
正直恐いが、ここでやらねば透明になった意味が無い。
やってやるーー。
やってやるぞーー。
気合いを入れた。
ひとまず視線は鎧野郎だ。
鎧野郎は余裕をかましてゆっくり動いている。
これなら間に合う。
パーーン
「ガッ、いってー」
警官の弾丸が俺の頭に直撃しやあがった。
痛む頭を触ると弾丸が張り付いていた。
少女を抱き上げると、警官の方に走り出し
「撃つなー、今助けるから-」
馬鹿なことに叫んでしまった。
これで鎧やろーに透明の俺の存在がバレてしまった。
やはり想定通り、少女の体が透明になっている。
警官の近くで少女を解放すると、少女の透明化が解けた。
ちょっとまて、うっかりしていた、いま鉄砲の弾が当たったよねえ。
ばあさん、防御と強化の魔法をかけたって言っていたよな。
今の俺なら、あの鎧野郎に勝てるんじゃね。
「気を付けろ、近くに姿の見えないスライムがいる。気配を感じろー」
へへへ、鎧やろー慌ててやーがるぜ。
でも俺は、正面からはいかねえ。
くそ野郎と思うなら思いやがれ。
「ぐはーーーっ」
「ぐあーー」
「くそおどこにいる」
「ぐああーー」
「俺たちを殺しても無駄だぞ。神殿で、直ぐに復活出来る」
「そうかよ。ならよけいに、やりやすい」
俺は倒れた勇者から剣をもぎ取ると、刺しまくった。
返り血は、俺の体に付くとそのまま透明になり俺の体はずっと透明のままだ。
十人ほど倒したら勇者のくせに逃げ出した。
その背中を三人ほど追い打ちして剣を深く差し込んでやった。
「ちっ、いったい何人で来てやがんだ」
勇者の姿が無くなるとそこら中から歓声が上がった。
警官の後ろだけで無く、逃げ遅れたのか瓦礫の中からも大勢の人が出て来た。
「透明のヒーローさん。一目姿を見せてもらえないだろうか」
「……」
かーーでけえ声だと思ったら拡声器かよ。
無理いうなよな俺は下半身が見せられねーんだよ。
「あなたは人間ですかーー」
ちーー、うるせーなー。
「おれはにんげんだーー。勇者やろーが来ねーうちにさっさと逃げなー。じゃあな俺は行くからー」
そう言うと俺は、その場を離れた。
ズボンとパンツを探しに。
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