第16話元伯爵家次男side
公爵家への慰謝料や賠償金で全財産を没収された。それでもまだ足りなかった。父が爵位を売って漸く完済した。
息子がしでかした不始末の責任を取り、法務大臣の職を辞した父だが、今まで国家に尽くしてきた功績で文官として留まるように言われた。どうやら御上は父上の才能を惜しんだようだ。もっとも以前と同じとはいかない。別の部署への配置換えになったようだ。
父上としてはそこまでして文官に留まる気はなかったようだが、母の事もある。精神のバランスを崩した母の為にも金はあるに越したことはない。
他の兄弟達も婚約を破棄された。
かくいう俺も、近衛騎士団団長から婚約解消を言い渡された口だ。
『君が悪い訳ではない。弟君と一緒だとは思っていない。君は私にも娘にも誠実だった。だが……君を信じられない者は騎士団に大勢いる。君自身を信じられても、君の流れている“血”が信じられないんだ』
ヴィランと同じ血が流れているから信じられない、といわれたらお手上げだ。「今は大丈夫でも何時、ヴィランのようになるか分からない」と言われたようなもんだからな。
俺が騎士団団長の跡取りになると言う話は団員の中で知らない者はいない。
裁判後に、団員達が誰も騎士団団長の命令をきかなくなった事も関係しているんだろう。俺を娘の婚約者にしておけば団員が言う事をきかない。それは指揮の統率に大きく影響する。
俺の地方への左遷も決まった。
生きて王都に戻る事はない。
ジャスティも既に地方に飛ばされている。
王都にいるのは、王宮で針の筵状態でいる父上と精神を壊した母上……あとフェリィーか。
フェリィーは……大丈夫だろう。
若さと美貌を武器に若いツバメをしている。
自分のための屋敷と毎月の給料を貰って優雅に暮らしている。一度だけ心配して様子を見に行ったが……
この弟は何処でも生きていけると――。
若さと美貌を失っても鋼鉄の精神は失わないだろう。
今日、俺は王都を去る。
見送りは末の弟だけだ。
「兄さん、例の辺境は
ニコニコ笑いながらエゲツナイ忠告をしてくる。
誰だ? こいつを「天使」なんて言ったのは。悪魔だな。実際の処、フェリィーのような奴が最後まで生き残っているんだろう。我が弟ながら逞し過ぎる。こいつはイザとなったら男すら誑し込んで戦乱を生き抜くに違いない。
もし、生まれ変わりってやつがあるならフェリィーを見習って小賢く生きたいもんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます