第14話犯罪幇助

 

 裁判はある意味で難航しました。

 それはヴィラン以外の5人の罪について。


 弁護士は飽く迄も「家族だからこそ、犯罪の手助けをせざる得えなかった」と主張し続けました。


「家族を犯罪者にしたくないという心理が働いたのです。何処の世界に実の息子を、弟を、兄を罪人にしたいと思いますか!? 愛すればこその行為なのです!」


 聞きようによっては家族愛の溢れる家庭のようだった、と執事長が呆れを通り越して感心していました。弁護士は今からでも俳優に転職できる程の名演技だったとか。


「裁判官は親による犯罪教唆を疑っておりましたが、確固たる物的証拠がなかった事もあり後半では『犯罪幇助』の方に傾きました。伯爵家の弁護士は優秀な上に人の心情に訴えかけるをお持ちのようです」


 執事長は奮闘した弁護士に敬意を払っているようでした。

 まぁ、証拠物件はヴィランの物しかありませんからね。弁護士もそこに目を付けたからこそ頑なに「犯罪幇助なのです」と言い続けたのでしょう。


「教唆」と「幇助」では罪の重みが違います。


 幇助の方が教唆よりも罪は軽い。同じ「犯罪の共犯」ではありますが、「幇助」は「元々の犯罪者を助ける共犯者」。対して「教唆」は「犯罪行為を唆して実行させる共犯者」なのです。判決によっては、実行犯よりも「犯罪教唆」の方が罪が重くなる場合もありました。




 裁判の結果、「三男ヴィランを主犯」とした「家族の犯罪幇助」で幕を閉じました。

 弁護士の熱弁と粘り勝ちという処でしょうか?

 もっとも、ヤルコポル伯爵夫妻は「育児放棄」の罪にも問われましたが、息子の仕出かした事を思えば当然でしょう。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る