バーサークアーミー

ロアン

第1話 善悪

 平和な日本の現代社会。その平和に気を取られ、現代人は裏の組織が段々と大きくなっていることを知らない。その組織は大きく二つに分けられ、どちらも対をなしていた。

 

 


 

第一話 善悪

 

 いつも通り学校に行こうと靴を履こうとすると、後ろから母がたたたっと体操服を手に持って小走りに玄関まで来た。あっ、と僕は思って振り返る。

「刹、忘れてるよ。もう中学生なんだから、しっかりしなきゃ。」

 そうちょっと笑いながら母は言った。ありがと。っと少し素っ気ない返事をして玄関を出た。外は快晴で空気は澄んでいる。学校では毎日ずっとほとんど同じことを繰り返しているようで僕にはつまらなかった。毎日同じ時間に起きて、同じ時間に家を出る。登校中は何も無いし、授業中なんて1番暇だった。言ってしまえば中一にして刺激が足りなかったのだろう。今日もきっと昨日や一昨日と同じ事を繰り返す──そう思っていた。

 事が起きたのは学校から帰った後だった。今日は父も母も仕事が休みで外に食べに行こうと約束していて僕は上機嫌で帰り道を少し早く歩いた。家へ帰ると母のおかえり、という声が玄関まで響いて、リビングへはいると父から、今日はどうだった?と聞かれた。僕は、特に何もないよ。と一言だけ答えて、自室に入った。直ぐに荷物を机の横へ投げだして、次に自らの体をベッドへ投げた。2分ほどだっただろうか。日に当たって暖かいベッドの上でぼーっとしていた。はっ、と思い出してカバンの中から数学のワークを取りだした。今日は課題が出ていたんだった。ワークを開いた瞬間、リビングの方からドタンドッタンと大きな物音がした。僕は驚いて直ぐにリビングへ駆けた。するとそこには

──血を流し倒れている両親が居た。

 僕は一瞬理解というものが出来なかった。まるで夢などを見ているような感覚で頭がふわふわして上手く回らない。その場に立ち尽くしていると、両親の近くにいた警察のような服装をした2人組の男が僕に近づいてきた。一人の手には血の着いた警棒があった。僕はそれに気がついたが、体が固まって全く動けなかった。

「坊やがいたのかい。俺たちは善行軍だ。大丈夫、俺たちに着いてきてくれれば、殺さないし、傷つけない。」

 そうもう1人がAIのような不気味な笑みを浮かべながら言った。善行軍…?聞いたこともない組織だった。

「……は?」

 大丈夫ってなんなんだ。善行軍ってなんなんだ、なんで両親は殺されたんだ。その募っ他疑問が一言だけ零れた。

「せ、つ、に……げな…さい。」

 母親の声がした。その声が合図だったかのように、僕の体の強ばりが解けた。にげよう、逃げなくては、そう、思って警察のような男たちの脇をすり抜けた。だけど相手は2人だけじゃなかった。玄関の方にもう2人居たんだ。

「捕まえろ!!」

 という声にすぐに反応した警察のような男たちが僕の腕をガチっと掴んだ。それはそれはとても強い力で、その時折れていたんだと思う。僕は痛すぎて声が出なかった。腕を折られうずくまっていたら後ろに気配がした。その時には遅かった。大きく腕を振り上げ、鉄パイプで僕の頭をガツっと殴った。僕は倒れ込むしか無かった。意識がはっきりとしない状態で、聞こえてきた。

「すまんなあ、坊や。お前の両親は、知っちゃあいけんことを知っちゃったみたいや。」

 知ってはならないことってなんだろうか。なぜ僕はこんな目にあっているのだろうか。疑問しかなかったが、プツっとそこで意識が切れた。

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