第103話 装備の重要性
「マオ、ミイナ、あんた等の小杖と魔法腕輪を出しな」
「え?二つともですか?」
「私も?」
「いいからさっさとしな。爺さんに見せるんだよ」
バルルに言われて二人は自分が持っている魔法を発現させるために必要な装備品を差し出すと、それを見たドルトンは目つきを鋭くさせて観察を行う。
「ほう……こいつは魔法学園で支給されている小杖と魔法腕輪だな。ん?こっちの小杖は……随分と年季があるな」
「あ、それは……」
一目見ただけでドルトンはマオの持っていた小杖とミイナの魔法腕輪が魔法学園で支給される装備品だと見抜いたが、彼はリオンが所持していた小杖を見て不思議に思う。
「この小杖は大分前に作られているな。それに碌に手入れもされていない……坊主、自分の身を守る装備品は大切に扱え」
「す、すいません……」
「まあ、そう怒る事はないじゃないかい」
ドルトンは目つきを鋭くさせてマオを睨みつけ、彼に言われてマオは言われてみれば小杖を手に入れてから手入れを行った事がない事を思い出す。いつも自分の魔法を使う時に利用していたにも関わらず、自分の小杖を大切にしていなかった事を反省する。
二つの小杖と魔法腕輪を確認したドルトンは腕を組み、バルルがどうして二人の装備品を自分に見せたのかは察しがついていた。彼女が用事もなく自分の店に尋ねる事は有り得ず、彼はバルルが来た目的を推理した。
「バルル……お前さん、まさかこの俺にそいつらの装備を作れと頼みに来たのか」
「話が早いね、あんたにこいつら専用の装備を見立てて欲しい」
「えっ!?」
「私達の……装備?」
唐突なバルルの発言に驚いたのはドルトンだけではなく、マオとミイナも同様だった。二人は急にこの場所に連れ出されたため、まさか自分達の装備を作るように頼み込むバルルに驚くのも無理はない。
「あんたらはまだまだひよっこだ。だけど装備を整えて置けば少しはマシになる……それに学園が支給する杖や魔法腕輪だと碌にあんたらの力を引きだせないからね」
「で、でもいきなりそんな事を言われても……」
「私達、お金持ってない……」
「何を言ってんだい、例の賞金首を捕まえた時の報酬があるだろう?」
バルルは兵士から受け取っていた
「ど、どうして師匠が報酬を!?」
「あんたらを引き取る時についでに受け取っていたのさ。あたしはあんたらの保護者だからね」
「でも、このお金は私達の……ううん、マオのお父さんとお母さんの仕送りのお金」
「それは知ってるよ。けどね、本当にそんな金の使い道が正しいと思っているのかい?」
「ど、どういう意味ですか?」
マオが賞金首を捕まえて大金を得ようとしたのは両親のためだが、折角手に入れた報酬を両親の仕送りのためだけに使う事にバルルは異議を伝えた。
「いいかい、確かにこの金を送ればあんたの両親は楽できるかもしれない。けどね、その後はどうするんだい?この金を送れば両親の借金とやらはなくなるかもしれないけど、それであんたは満足なのかい?」
「満足って……」
「あんたの事だからこれからも金を稼いで両親に仕送りをしたいと思ってるんだろう?だけど、子供のあんたが簡単に金を稼ぐ事なんてできない。それこそまた賞金首を狙わない限りはね……そんな危険をまた冒すのかい?」
「それは……無理です」
賞金首との戦闘でマオは嫌という程に犯罪者と戦う事がどれほど危険な事なのか思い知らされた。今回の相手は高額の賞金首という事もあって普通の犯罪者よりも危険な存在だったという理由もあるが、仮にガイルよりも下の賞金首を相手にしたとしても今回のように上手く捕まえられる保証はない。
そもそもガイルとの戦闘も相手がマオを魔法が扱える子供だから生け捕りにしようと試み、標的が子供だからという理由でガイルと手下達が油断していたお陰で隙を突けた。仮にガイルが最初からマオとミイナを殺すつもりで動いてたら今頃は二人とも死んでいたかもしれない。
「あんた等は普通の子供よりは強い、それは間違いないよ。だけどね、あんた達が特別なのは魔法が使えるからに過ぎない。そして魔法を使う道具がなければあんた等はただの子供なんだよ」
「あっ……」
「はうっ……」
バルルはマオとミイナが魔法を扱えるのはあくまでも「
「魔術師や魔拳士にとって杖や腕輪は自分の命を守る武器その物なんだよ。だけど、この小杖と魔法腕輪じゃ今のあんた達の力を完全には引きだせない。だから爺さんの力が必要なんだよ」
「……バルル、お前さんまさか儂にこの子供二人の装備を作れと言いに来たのか?」
「こいつらはただの子供じゃない、このあたしの弟子さ」
「全く、相変わらずだな……」
ドルトンはバルルの言葉に苦笑いを浮かべ、改めてマオとミイナに視線を向けた。
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