第69話 協力者は……

「姐さんはいるかい!?」

「きゃっ!?あ、貴女は昨日の……」

「そういうのはいいからギルドマスターに会わせてくれ!!今すぐに!!」

「ちょ、師匠……落ち着いて」

「どうどう」



バルルは冒険者ギルドの受付で大声を上げ、何事かと建物内に居た冒険者達が顔を向ける。マオとミイナは彼女を落ち着かせようとした時、丁度良くギルドマスターのランファが現れた。



「バルル、騒ぐんじゃない。私はここにいるぞ」

「姐さん!!丁度良かった、昨日の件はどうなってるんだい!?」

「ちょ、ちょっと!!ギルドマスターに何て口を……」

「いいんだ、ここは任せてくれ」



ランファに詰め寄ろうとするバルルを見て受付嬢は注意しようとしたが、それを制したのはランファだった。彼女はバルルの肩を掴み、まずは落ち着くように告げる。



「ここで騒ぐな、話はちゃんと聞いてやるから場所を変えるぞ」

「あ、ああ……すまない、取り乱したね」

「ど、どうも」

「どもども」



マオとミイナはランファに頭を下げると、彼女は頷いて3人をギルド長室まで連れていく。その様子を受付嬢は不満そうな表情を浮かべて見送った――






――部屋に到着するとバルルは事情を話し、三日後にマオが試験を受ける事になった事を話す。予想よりも大分早く試験が決まった事で彼女は焦り、ランファの元に訪れた事を話す。



「というわけで三日以内にマオに実戦経験を積ませないといけなくなったんだよ。こっちの都合で悪いんだけど、早いうちに護衛を引き受けてくれる奴を紹介してくれないかい?」

「ふむ……」

「無理を言っているのは分かってる。でも、こっちも時間はないんだよ。頼む!!この通りだ!!」

「し、師匠!!」

「そこまでしなくても……」



バルルはランファに対して頭を下げると、それを見たマオとミイナは驚いた表情を浮かべる。しかし、マオは自分のために頭を下げてくれたバルルの心意気を感じ取り、自分も頭を深く下げて頼み込む。



「お願いします!!どうか力を貸してください!!」

「……私からもお願い」

「お前達……顔を上げてくれ。これだと私が悪者みたいだろう」



自分の前で頭を下げてきたバルル達に対してランファは困った表情を浮かべ、彼女はそもそも3人を連れ出したのはギルドで騒いだことを注意するためでなく、用件を既に果たしている事を伝えるためだった。


ランファはベルを鳴らすと外に待機していた男性の職員が駆けつけ、彼にランファはある冒険者達を連れてくるように指示を出す。それから数分後、ギルド長室にマオたちも見知った顔ぶれが訪れた。



「よう、バルル!!昨日ぶりだな!!」

「あ、あんたら!?どうしてここに!?」

「へへへ、お前が困っていると聞いてな」

「仕事を早めに終わらせて帰ってきたんだよ。それで俺達の力が必要だって?」



マオ達の前に現れたのはバルルとは古い付き合いの冒険者3人組だった。ちなみにこの3人組の名前は「トム」「ヤン」「クン」であり、全員が銀級冒険者でもある。


冒険者集団の隊長リーダー格を務める「トム」は剣士、斧を扱う「ヤン」は3人の中で一番の腕力を誇り、最後のクンは槍の使い手である。まさかバルルも彼等が仕事を引き受けてくれるとは思わずに驚く。



「あんたら……いいのかい?迷惑をかける事になるけど」

「へへ、気にすんなよ。同期の好だ」

「それとも俺達の実力じゃ不安か?」

「言っておくが俺達も成長してんだぜ?今ならオークの群れだって退治できらぁっ!!」



力自慢のヤンは自分の斧を軽々と振り回し、他の二人も各々の武器を手にしてバルルに見せつけた。そんな彼等の行動にバルルは苦笑いを浮かべ、一方でランファの方は昔の同期が集まった事に懐かしそうな表情を浮かべる。



「この3人ならば護衛を十分に務められるだろう。お前とも仲が良いから緊張する事もないし、一緒に仕事をしてきた事もあっただろう?昔のように力を合わせてこの子達を守るんだ」

「姐さん……気を遣ってくれたのかは嬉しいけど、できればもうちょっと真面目な奴等を紹介してほしかったね」

「おいおい、そりゃないぜ!?」

「お前が困ってるからこっちだって無理をして前の仕事を終わらせてきたんだぞ!!」

「たくっ、そういう所は相変わらずだな!!」

「冗談だって……感謝するよ」



バルルの言葉に3人は文句をつけるが、彼女も本気で言っているわけではなく、むしろ見知らぬ冒険者に頼るよりも昔からの知り合いである彼等ならば信頼して仕事を任せられた。改めてバルルは3人に感謝を示すために握手を行い、迷惑をかけたランファに頭を下げた。



「姐さん、迷惑をかけて本当にすまなかった」

「気にするな……いや、今度良い酒を持ってきてくれ。そうしたら許してやる」

「ああ、約束するよ」

「おう、俺達の分も忘れずにな!!」

「うるさいね、あんた達には金を払うんだからそれでいいだろう!?」

『あはははっ!!』



こうしてバルルは古い知り合いの冒険者を護衛として雇い入れる事に成功し、早速だが彼女はマオに魔物との実戦経験を積ませるために急いで準備を行う――

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