23話 反撃ののろし


「あン? てめえら、こんなとこでなにやってんだァ?」

 

 肉が砕けた音の正体。

 オークの頭部から槍をどけ、リーゼント姿の男性が聞いてくる。

 荒々しい口調に驚くところだけど、今は頼もしくて仕方なかった。


「リーゼンさん!」


 ノルくんがその名を叫ぶ。

 リーゼン=ツッパリー二。

 バドさんが言うには、ダンジョン攻略担当の彼。

 実際に、大槍を振り回して立ち回る姿は本当に頼もしかった。

 

 ひとりで、いったいどんだけ魔物を倒しちゃうの……?

 ただ、この人がひとりでいるっていうことはおかしい。

 だって、リーゼンはここにはパーティーで来ているんだもん。


 一層、大きな爆発音に破砕音が鳴り響く。

 ほら、やっぱり。


「──おおおおおおらああああああ!!」


 何重にも重なった裂帛の咆哮とともに迫りくるは、各々武器を携えた荒くれ者の軍団。

 ぱっと見ただけだと恐怖を抱くような光景だけど、今の私たちにとっては希望だった。


 各々、雄たけびとともに周囲の魔物を攻撃し始めた。

 統率が取れてないようなバラバラな動きに見えるけど、ちゃんと息ぴったりな連携をしていた。

 強力な魔法で怯ませて、剣や槍で一気に畳みかける。

 武器で叩き、魔法でトドメを刺す、なんてこともやってみせた。


 時間の経過と一緒に、着実に魔物の数を減らしていく。


 本当は、私たちが助けるつもりだったのに……。

 ノルくんが信じた人たちは、本当に強い人たちだったみたい。


 それもきっと、彼らが絶対的な信頼を置いているこの人のおかげ。


「おうおうおう! てめえら声が小せえぞ! もっとド派手にぶちかませやァ!」


 オークの群れを蹴散らし、一気に流れを掴むのは長の声。

 士気を高め、補助魔法でフォローする。

 この人が後ろにいる、背中を押してくれる。

 その感情が、荒くれ者たちの士気を極限まで高めていた。


「よう、アンラッキーモータリティー諸君。また会うことになるとは思わなかったが……。ケガはねえか?」


 優しく微笑みかけ、手を差し伸べてくれる姿。

 紫髪を揺らす、バド=リードさんの姿がとにかく眩しかった。

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