第6話・閑話 ギルドマスターは悩んでいる…

 ギルドマスターのテスタ・グランベリオンは、テッドの父親の遺品を整理していた時に見付けた手紙に頭を悩ませていた。


 「あの野郎…俺にこんな事を遺言状に残すなよ‼」


 ギルドマスターのテスタは、何度も手紙を読み返していた。

 そこには…テッドの出生に関わる事が書かれていた。


 【テスタ…君がこの手紙を読んでいるという事は、僕はもうこの世にはいないという事だな? カノンが身籠った時にパーティーを解散した事をまだ怒っているのかな? あの時はカノンの体調が不安定で、どうしても無理をさせられなかった。 だけど、僕は国王の命令でどうしても遺跡探査に行かなければならずにカノンを連れ出してしまった。 そしてカノンに無理をし要らせた為に、お腹の子は流産してしまったのだ。】


 ここまでは良い…が、問題はこの先だ‼


 【封印されていた魔剣シーズニングを見付けた時に近くにあった大きめのオーブがあった。 その中には男の赤ん坊が入っていた。 僕は得体の知れない子を連れて帰る訳にはいかなかったが、子供を流産した翌日に拾ったオーブを妻は運命を感じると言って自分の子供として育てると言った。 するとオーブは砕けて中から赤子が出て来た。 僕と妻はその子【テッド】と名付けて育てる事にした。】


 何て事だ…

 テッドは、バットンとカノンの実の子では無かったのか⁉


 【最初は得体の知れない子だと思って注意をしていたが、それは杞憂に終わった。 テッドは頭の良い子で、翌年にリットが生まれ、その翌年にはルットとロットが生まれたけど、テッドはカノンを手助けしながら3人を育てるのに協力してくれた。 そして…スタンピードが発生して、カノンは命を落とし…僕は瀕死の重傷を負った。 僕の命はもう僅かだろう。 1つだけ心残りなのは、テッドにこの事実を告げずに旅立つ事になる。 だからテスタ…君にこの手紙を託す! 真実を告げるのも、真実を伏せるのも君に任せる。 後は頼む… バットン・リターンズ】


 こんな重要な話を俺に任せるなよ‼

 どうすれば良い…?

 どうすれば…?

 1人で考えていても頭が働かない。

 俺は…ライラに相談する事にした。


 「ライラ…話がある!」


 俺は真剣な表情でライラに言った。

 するとライラは顔を赤くして、小さく頷いた。


 「俺はお前に…共有して欲しい物がある。 良いか?」

 「は…はい!」


 ライラは深呼吸をしながら心を落ち着かせている…そんな感じに見られた。

 何の覚悟の儀式かは知らんが、確かにこの手紙の内容を伝えるのならば、それ位の覚悟で構えないと受け入れられないだろうと思った。


 「実はな…ライラに共有して貰いたい物とはこれなんだが…?」

 

 ライラは目を閉じて左手を前に出していた。

 一体何の真似だろうか?

 俺はライラにこの手紙を読む様に伝えた。

 するとライラはがっかりした表情をした。


 「真剣な表情をして、共有して欲しい物がある…と言われたら、てっきり私は…」

 

 そう言ったライラは、涙を流していた。

 あ? あ~~~~~!


 「済まないライラ、俺は気が回らなかった! 確かにそんな話をされたら…勘違いするよな?」


 俺はライラの事は嫌いではない。

 寧ろ…いつも一緒にいたいとさえ思う。

 普段は同じ職場で仕事をしている仲だったから、あまり意識をしない様にしていたが…

 確かにこれでは…


 「ライラ…俺で良いのか?」

 「私は貴方が良いんです!」


 俺は頭を掻きながら、ライラにプロポーズをした。

 そして俺達は…って、そうじゃない‼


 「ライラ、正式な婚約は後にまわすとして、まずはこれを見てくれないか?」

 「あ…はい!」


 俺はバットンの手紙を渡すと、ライラの表情が一変した。

 そしてライラは先程の俺の発言を理解したようだった。


 「なるほど…共有したい話というのはこれだったのですか?」

 「そうなんだ…俺はどうしたら良い?」

 「事が事なだけに、迂闊に話をしてはいけませんね。」

 「やはり、テッドが成人になる迄…か?」

 「その方が良いでしょう。 あの兄妹達は、この真実を知ったら関係が…」

 

 ライラはその先を言わなかった。

 それは俺も同じ事を考えていたからだ。


 だが、この話は…

 意外な所で露見する事になってしまうのだった。

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