明日

 元気が良くて、優しくて、みんなの声は、いつも傍に。高台にある伊織の家からは、眼下の街がよく見える。新しい季節は、いつもどこか落ち着かなくて、期待を不安が入り混じる。窓を開けて、そっと目を閉じる。頬を瞼に当たる光を感じながら、静かに耳を澄ませる。其処には、聞きなれた声が入って来る。目を開ければ、家の前で手を振る友人達。


「伊織! 映画一緒に観ようぜ!」


 声が大きいと、両隣の青と赤にぺちんと叩かれる黄色。いつも、この声が傍にあった事。伊織は不意に思い出して、何だか急に目頭が熱くなった。


「いいわよ、みんな上がって」


 それを誤魔化すように微笑んで、手招きした。新しい季節が来て、また一緒に歩みだす。抱えきれない夢と、数え切れない希望と共に。

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