第129話 ゲートクローズ

 日本政府からの要請として、一部の、本当にごく一部の者だが、政府から住人を移住させたいと言って来た。これは俺も賛成だった。理由は簡単である。人類の種の保存の為である。DNA鑑定からエルフや獣人族はともかくとして、エルザは純粋な人間と評価された。つまり、昔からこのようなゲートが開き、そこから入り込んだ地人の末裔なのだ。


 日本人を別の世界に送り込み、そこで人類を、そう間違いなく人類の種を別の星に送り込むと言う夢物語りを果たせるのだ。


 残念ながら恒星間の航宙技術はまだ基礎研究の段階だった。


 移住者達の面倒を見るのは金銭的に問題はない。それ位の稼ぎはある。実質的に1国1城の主になるのだ。尤も表立って支配者となるつもりはないので、その国の守護者として過ごすのだと予測していた。


 結局、文明社会を忌み嫌い、文明レベルでいうと数百年は劣っている向こうの世界で農耕や商業を営み、テレビもない生活をしなければならない。ただ、そういった事を好む者達が意外な程多く、ほぼ着の身着のまま、鞄1つでやって来る者が100人位いたのだ。もちろん人数に制限をかけ、ほぼ男女半々になるようにしていた。ただ、分からないのだが、移住した者達には召喚者と違い何か能力を得られるのかが不明ではあったが、ゲートを閉める時間には移住者全員が集まっていた。


 2日というものはあまりにも短い。

 この100年の間に起こった出来事を完全には把握できなかったが、新聞データなどを一通り貰って、向こうに行ってから資料や移住者から学ぶ事にした。


 技術的な事は電車は無理だろうが、蒸気機関から始めたらどうかという事で、蒸気機関車のカットモデルとなっている1m位のスケールモデルを3 D プリンターと言われる物の進化版で作られた部品等、設計図共々貰っていたりする。そのプリンターや、端末も渡された。


 端末が必要とする電力供給をどうするかとなったが、そこは大量の太陽光発電装置と蓄電池を始め、各種発電セットを買っていたから問題はなかった。


 そしていよいよゲートを閉める時が来た。テレビ中継されると言うが、盛大な式典が催された。オーケストラの生演奏付きという一風変わった事をしていた。既に向こうの世界からの贈り物は届けてあり、俺も貰っていた。


 そしてお互い行き来していた人達も全て本来の位置に戻っている。


 ゲートを閉じ始めたが、リナが一言告げた。


「ちょっと待ってください。一旦テレビの映らないゲートのあちら側の方へ行きます」


 リナがゲートからこちら側に急いでやって来た。


「私は自分が友安の血縁者だという事を恨んでいますが、貴方を愛してしまいました」


 リナは俺にキスをし離れようとした。俺はリナを抱きしめキスを返し、胸を揉んでゲスを演じた。そうしながらリナに特別なネックレスを掛けた。そしてミスリルの短剣が数本着けられた脚に付けるベルトを渡す事にした。


 彼女のスカートをまくしあげ、その太ももをすりすりではなく、その細い脚にベルトに着いたナイフの束を巻きつけ、見えないように固定した。彼女は恥ずかしがったが、何をしているのか分かり感謝をし、別れ際に俺から再度キスをした。最後は握手をして送り出したのだ。


 渡したのはゲートが閉じる直前に投げ込む予定の品だった。そしてつつがなくゲートを閉じていった。


 しかし、後から事実を知ったのだが、実際はもうひとり必要で、カナロアが俺の制止を振り切って日本に行ってしまった。彼は俺からの魔力供給の関係で、1ヶ月もすれば自分が消え去ると分かっていて動いたのだ。その旨の置き手紙が馬車の中から見つかったのだ。自分の体験としてこうなると知っていて、別れの言葉を綴った手紙を置いていったのであった。

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