第105話 今後の事

 一通り村の見回りが終わったので、改めて村の者に確認するも、村長は盗賊の頭領だった。

 本当の村長はとうの昔に殺されていて、頭領が村長として長きに渡り村を支配していた。


 村人は全て奴隷にされていたので、即時に奴隷開放を行った。


 ここは農業を主体にする小さな村だった。特に特産品はなく、農業以外では実用品を作り、近隣の町や村で売り買いしている者が多かった。これもカモフラージュだ。


 暫くするとフランカが母親を連れて戻ってきた。

 フランカも失った幼き日の記憶を取り戻し、父親と思っていた者が実は父親ではなかったのだと思い出したのだ。


 母親を捕らえていた奴を父だと長年にわたり誤認していたと思い出したのだ。


 本物の父は盗賊に向かって行き、真っ先に殺されたのだと思い出した。


 この男は他人の奥さんに横恋慕していて、横取りしたのだ。確かに大事にはしていたが、当初は心身共に支配する為、殴ったり性的に暴行をし続け、挙げ句の果に奴隷にしていた。


 フランカは複雑だった。10年近くこの者を父として過ごしてきたのだ。

 幼子には父が目の前で殺された事実が受け入れられず、心がブレーキを掛け、記憶の改ざんを行い自我の崩壊を防いでいた。


 フランカがその男を斬り裂こうとしたが、あろう事か母親が覆い被さり庇ったのだ。


「ごめんねフランカ。 種としての宿命なの。既にこの人を受け入れてしまっていて、依存しているの。この人を失う訳には行かないの。だからこんなろくでなしでも村で一緒に暮らしてくれないとお母さんが困るの。ごめんね」


 俺はフランカの夫だと挨拶し、詳しく話を聞いた。


 奴は酒癖が悪いが、それでも最初以外、決して暴力だけは振るわなかったという。

 奴に下る前の最初の頃は殴られたりしたが、番として下ってからは優しかったと。種として受け入れると相手に尽くし、体が依存してしまい生きている限りはずっとそうなるのだと。番が自然死してしまうと新しい番を探す。殺されたならば後を追って死を選ぶ。番になっている間は浮気は一切せず、ひたすらその相手を愛するのだと。だからフランカを大事にしてやって欲しいといわれた。


 奴を許す訳では無いが、盗賊さえ来なければ善良な村人だったはずで、俺にはこの男を殺す事は出来なかった。


 フランカのお母さんが望むように、俺の奴隷として村の管理下に置き、村に尽くす命令を下す事にした。酒は基本禁止。真面目に働けば月に1度中ジョッキ1杯程の酒を認める。


 他の盗賊は話が違う。全員殺しをしている犯罪者なのでその処置は仲間で話し合う事にした。


 また、村には新たな村長を選定する。男女比がおかしくなるのが1番の問題だ。女性は程度の低い高いは有るが、奴隷として性的暴行を日常的に受けていたという。

 ただ、皆口を揃えて村を離れたくないと言うのだ。生まれ育ったこの村に愛着があるのだろうか?。また、愛する夫が死んだ地だというのもあるようだ。


 男手が足りない。いや、いない。

 犯罪具合の低い奴は村に労働奴隷として置いておくにしろ、他の町や村の中から奥さんに先立たれた者を中心に募り、再婚相手の候補者として送り込む提案をエルザがしていた。


 明日エルザが提案した内容について村人と協議する事になった。そして俺達が逗留するのは、盗賊のアジトとして使われていた屋敷となった。

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