第103話 死闘

 俺は高々盗賊風情だと思い、彼奴等を侮っていた。


 送り込んだ奴らは各々1人を倒したが、その後は怒声と共にあっさり切伏せられていく。倒したのはあくまでも一斉に不意を突いたからだ。


 俺達は村の入り口で待機していたが、盗賊達はあっという間に俺が送り込んだ10人全てを始末すると、一気に村へと駆けてきた。


 俺の立ち位置は先頭で仁王立ちして出迎えるだ。

 奴らから何かが飛んできたが、油断しまくっていたので気が付くのが遅れ、俺は腹に喰らってしまった。

 見事に吹き飛ばされて悪態をついていたが、この特殊な槍は何故か俺の装備を貫通したのだ。


 槍を抜いて貰うが、返しが付いていて抜く時に肉をえぐる。

 俺は激痛に叫んでいて槍を抜いて貰ったが、辛うじて痛みにより気絶せず、ヒールを掛けてなんとか自分自身を治療した。装備は一昼夜もすれば自己修復する代物だが、貫通した事に驚いた。


 カナロアが怒りに任せて突進した。


 エルザは俺の護衛にと慌てて駆け寄り、助け起こしてくれた。今は相手が強者だと認識したが、先程までは雑魚認定だった。だれもこの展開を予測しなかった。力を探りにくくしているようだ。


 ムネチカが俺に近付いてきた。


「あれはSS以上のランクだと思ってください。エルザ、友安様を任せます。本気を出さないと勝てません。その、多分本気の私を見たらお嫌いになると思うので、出来たら友安様は見ないで下さい」


 そう言い残すと盗賊達の方へ向かう。


 カナロアが短い時間で発動できる法術と剣による峰打ちで既に頭領以外は倒していたが、頭領には効かなかった。


 剣で斬り合っていたが、なんとカナロアが押されていた。


 そして、カナロアは胸を貫かれ、頭領が首を刎ねに来た。その刃がカナロアの首を捉える直前に、ムネチカが割って入り専属武器で剣を受け止めると、カナロアを俺の方へと蹴り飛ばした。これにより恐らく肋骨が全て折れている。


 俺はカナロアに対し、間髪いれずに治療を開始した。心臓をやられていて、口から血を吹き出していた。胸を貫かれていたが、心臓をやられてしまったようだ。


 気の所為か、ムネチカはなんか一回り大きく、しかもムキムキになっているような気がする。エルザが咄嗟に視界を塞ぐように立ち塞がった。


「後生ですから見ないであげて!」


 顔がちらっと見えたが、かなりの醜女だった。俺は言われなくても目を背けたが、見なければ良かったと後悔した。


 多分能力解放の副作用なのだろうが、俺はショックだった。強さは桁違いで、まるで野獣、いや、化け物の類いだ。彼女を抱いても良いと言われた場合抱けるか自信がない。もし今晩裸のムネチカが俺の布団に忍び込んできても、俺は彼女を見た瞬間萎えるだろう。


 本気になると30秒も掛からずに決着した。


 頭領の四肢を折り、目を潰していたのだ。醜女になってからは実に一方的な戦闘だった。いや違う、大人が子供をいたぶっているとしか思えない位酷かった。やり過ぎで、犯罪者である頭領に対して正直同情したよ。


 ムネチカは元に戻っていたが、頭領を連れて此方に向かってきたのだが、俺は思わず1歩後ろに下がってしまったのであった。

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