第100話 フランカの生まれ故郷へ
俺は第1目標であるイリア達の屋敷を無事確保する事に成功した。
次はイリア達の親について遺体を捜索する事にしていたが、断念せざるを得なかった。処刑した王族達をまとめて1つの穴に葬ったと分かったからだ。どうにもならないと皆理解したので、いずれ屋敷にある形見の品をもって墓を建てる事になった。
また、後日の話になるが、まとめて埋められた者達を掘り起こし、丁寧に埋葬し直したいと強く思う。
次はフランカの親に会いに行く事になった。
この町から村までは馬車で2日位と言うので、食料と飼い葉を補充し、町を出る事にしているが、念の為イリア達の屋敷跡がどうなったか確認する為にしれっと近くを通る事にした。
屋敷があった敷地の周辺はかなりの人で、俺は周りの人に聞いた
「あのう、この人だかりは何かあったのですか?」
「驚いたのなんの。ここには貴族様の屋敷があったんだけどさ、昨夜忽然と姿を消したんだとよ。どうやったらこんな事ができるのやら」
俺は笑い声が出るのを必死に堪えていたが、イリアとミリアは窓からそっとその様子を見ていた。
それから直ぐに町を出る。門番に屋敷の情報を何か知らないかと聞かれたが、先程人だかりを見ましたよと話すと、ため息を付きつつ、行けという感じに手を振っていた。
1時間位すすんでから街道から外れ、細い道を山間部を目指して進む。辛うじて馬車がすれ違える程度の細い道だ。
峠を越えるとのどかな農村地帯を通る。
俺達の馬車ものんびりと進む。
急ぐ事の無い旅だからだ。
のんびり進んでいるのは、イリアとミリアは馬車の中で苦しんでいたからだ。急成長する体が痛むのだ。
予め聞いてはいたが、見ていられない位に辛そうだ。2人は俺に撫でてくれと懇願し、ずっと抱き着いていた。というより、爪を立ててしがみ着いてきている。おかげで俺の背中からは血が出ているが、2人の背中をさすってあげると、少しはましだという。
夕方になり野営の準備をしていたが、カナロアが警告してきた。
「友安殿、お気付きか?」
「昼からつけてきている奴らか?」
「流石ですね。どうなされますか?」
「そうだな。俺が見に行って来るから守りを頼むよ。俺とムネチカとで対処して来るから。フランカは馬車の中でイリア達を頼む。ミザリアは全体を見てフォローを。エルザは馬車から離れないように。カナロアは俺達が突破された時の頼みの綱だ」
ムネチカを伴い、つけてきている奴らを見に行く。15分位進むと不意にムネチカが警告してきた。
「友安様、不味そうです。直ぐに馬車を出した方が良さそうです」
俺も嫌な予感がするが、ムネチカの方が察知能力が高い。
俺はミザリアに念話を送る。
「ミザリア、今直ぐそこを離れて逃げろ。俺達を待つな。俺とムネチカで時間を稼ぐ。イリアとミリアを守りながらでは無理だ。行ってくれ」
一方的に伝えると戦闘態勢に入る。
「ムネチカ、ここで食い止めよう。ちと遅かったようだ。いざとなれば皆の方に逃げる。ほら、来たぞ」
それはゾンビの大群だった。ゆっくり追ってきたのは距離を詰めずに追ってきたからではなく、単に足が遅かったからだ。
装備から兵士の死体だと分かる。
「この辺りで戦争があったのでしょうか?」
「イリア達がいた国が滅ぼされた戦いだろう?半年以内のはずだ。きっちり倒して成仏させようぜ」
そうして2人で皆が逃げ切れる時間を稼ぐ事になった。イリア達が正常な状態ならば、この辺りが戦場だったと教えてくれた筈だ。
ムネチカは俺の護衛だ。分の悪い勝負をする事になった。相手の数が多過ぎるのだ。
「悪いなムネチカ。危険に付き合わせて」
「後でキスの1つや2つはしてくれないと割が合わないわ。コホン、来たわね」
俺は森が燃えるのを承知でファイヤーボールを繰り出す。まず先頭のゾンビに当たったが、周りに飛び火しながら勢いよく燃え始めるのであった。
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