第86話 事後処理と備え
戦いの直後、謁見の間には沢山の死体が散乱していた。敵味方を区別せずに死体を含め、装備諸共取り敢えず俺の収納へ入れる事になった。
そうやって回収した死体の数は約100体であり、 武器もそれ相応の数があった。
更に俺は首を切り落として倒す事が多いので、奴らの着ていた戦闘用スーツは数着が無傷だった。
また、どうやら奴らの殆どは、小型のハンドガンをサブウェポンとして装着している。
メインウェポンはそれぞれ違ったようで、電磁砲、つまりレールガンと思われるのや、サブマシンガンと言われる銃の大きさの物があったりした。エネルギーはどうやらエネルギーパックを交換するようで、各々2~5個のエネルギーパックを持っていた。
こちらの兵士の殆どは、サブマシンガンに見えるレーザー銃によってやられていた。
サブウェポンであるハンドガンも、いわゆる短銃と言われるものであろうが、そちらもレーザー銃であった。
大会議室にて回収した死体を出して行き、敵味方で分けて並べていった。それらを検分していると各国の王も検分の為に現れたが、誰が言ったのだろうか?この国の王がおらんなと聞こえた。確かに城にいるはずの王の人数が少ない。
俺は所構わず死体を回収していったのと、血塗れだった為にその時は分からなかったが、回収した死体を全て出したところ、兵士の死体に混ざってあの王がいた。
どうやら予測よりかなり早くゲートが開いたようで、この王は謁見の間で何かをしていたようだ。
そこに急にゲートが現れ、敵兵が突入して来た為に真っ先に殺されたのだろうというのが、その場にいた者達で話し合った結論である。
この王が何をしようとしていたのか、今となっては分からない。 今まで散々してはいけない事をし、おそらく今回のこの変異も、してはいけないタイミングでの無理な勇者召喚により、時期が早まったのと、場所もここになったのであろうと結論が出た。結局変異を引き込んだだけだったのだ。
また、話し合いの後に俺はエルザの元に向かった。
治療がまだ途中だったからだ。辛うじて出血を止める程度の応急的な治療のみをしてから俺は戦いに挑んでいったが、エルザは酷く傷付いていた。
本来この世界の者がエルザと相対しても、エルザに敵う者はほぼいないであろうという腕前である。
そんな彼女が一方的に倒されてしまったのだ。
尤も理由は簡単である。
銃というものを知らなかったので、その銃より手足を撃ち抜かれてしまい倒されたのだ。また、パワードスーツの力はステータスの補正を凌駕していたようで、組み伏せられたのだ。
エルザが殺されなかったのは、ひとえに見目麗しい女だからで、奴らは正規兵ではないのであろう。正規兵であれば捕らえた女を犯す等というような非道な行動は取らないはずだからである。
少なくても文明レベルはそうだろう。
エルザはミザリアと一緒にいた。
怪我がまだ治っていないので苦しそうにしている。 俺は遅くなった旨を謝罪しながら彼女に触れ、一気に治療していく。特に酷かったのは脚だ。エルザも自分の体が治されたのだと理解した。治療の為ミザリアが服を脱がしていたので裸の上からシーツが掛けられているだけだった。
それでも痛みが引いて、俺の顔を認識した途端に俺に飛び付いて来て、唇を貪った。何度も何度もありがとう!ありがとう!と、可哀想な位に俺に涙しながら半ば叫んでいた。
「私の純潔を守ってくれてありがとう」
落ち着いてその一言を述べた時に、自らが裸である事に気が付いたようで恥ずかしそうにしていた。念の為彼女の身体に対してくまなく触診を行い、違和感がないかを確認してして貰った。 治療は問題なく終わっていたようだが、彼女の体はレーザービームで数カ所撃ち抜かれた為、内部を大きく火傷していたようだ。 戦いの最中だったのもあるが、可哀想な事をした。数日後にもう1度 確認する旨を 話し、今日は休む事にした。犯した後に殺すつもりだったからか、内臓の他に四肢の腱も切られていて、はっきり言って奴らはクズだった。
おそらく次にゲートが開くのは明日であろうという事で、明日に備えて休む事にした。 ゲートの出現ポイントの周りには兵士達が監視をし、万が一現れた場合は即座に俺達を起こす事になっている。
念の為俺はいつでも戦闘ができるような格好で寝る事にした。
今はエルザは落ち着いており、もう戦えると言う。そこで俺はエルザにお願いをした。
ゲートが現れた場合、真っ先にエルザの持つ必殺技をゲートに向かって放つようにと。
ゲートの向こう側に飛ばす為である。コントロールが難しいと言うが 、ある程度近付けば大丈夫なはずだ。
あの1撃はかなり強烈なものとなるだろう。
ここに向かう道中、威力を確かめる為に空に向けて放って貰った事があるのだが 、貯めの時間をかなり長く擁するのが難点だ。
それに予備動作も大きい。ただし技を発動する時間を稼ぐ事ができさえすれば、あり得ない位の威力が出る。
総合力で俺の魔法とどちらが強いかは分からないが、最後の決め手になる1撃となりうる。1撃の威力としては俺が知る限り最大だ。俺達が時間を稼ぎ、エルザが決着を付ける流れを作る事が出来れば、戦いの幅が広がる。今回はゲートに対して有効だと思うし、彼女のリベンジマッチにもなるかも?
俺は考え事をしていたが、いつのまにやら眠りに落ちたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます