第46話 奥へ

 リザードマンの魔石を抜き取ると奥へ向かう。

 進み出してから200m位行っただろうか、ふと魔物の気配を感じたのだが、何故か姿は見えなかった。

 気配から距離は30mまで来ている筈だが、何処にいるのか分からず焦っていた。


 突然俺はフランカからタックルをされ、フランカに抱き付かれた形で後ろに吹っ飛んだ。

 そして今まで俺がいた場所に魔物がおり、そのくちばしが地面に突き刺さっていた。


 「ありがとうフランカ。助かったよ」


 お礼を言いつつ身構えて魔物に対して魔法を撃ち込む。

 そこにいたのは体長3m位のグリフォンだった。ミザリアが警告を発した。


 「グリフォンは、A級よ気を付けて!」


 俺は経験の無さを呪い、毒づいていた。確かに周辺の警戒はかなりしていたが、あくまでも俺達、いや違う、俺の目線、文字通り目の高さでの警戒であり、上空への警戒をしていなかったのである。

 ここはグリフォンの産卵場に近かったようで、通常の個体よりも大きいらしい。産卵地と言う事でグリフォンの卵を採る事がこのエリア1番の稼ぎ頭になる。かなり美味しいらしく、高値で取引される。


 グリフォンは魔物ではあるが、長生きした個体は、魔石を核として魔力の増殖により肉体が生成される以外の増殖の仕方を可能にすると言う。

 つまり産卵での増殖だ。但し卵から生まれる個体も結局の所魔石を持った魔物には変わりない。違いは生まれ方だけであり、それと卵から生まれた個体の方が大きくなる傾向があり、群れのリーダーとなる可能性がある。この島のグリフォンは卵を生むまでの時間は、他の地域と異なり、リポップしてから1日もあれば産卵をするようになる。


 またその卵はかなりの美味らしく、グリフォンの成鳥の肉は 美味しくないので需要が無いと言うが、卵は別だった。


 俺はグリフォンの卵を本気で探してみようかと考えた。どうやら奴は俺をターゲットに選んだようで、他のメンバーには目もくれず、口を開いたかと思うと、見えない何かによって俺は弾き飛ばされた。木に激突する直前に俺の背中辺りにクッションが発生し、木への激突はかなりの勢いを殺してくれた。そのお陰で殆どダメージが無かった。

 どうやらミザリアが風魔法の何かを使い、俺の吹き飛ばされた先の木の所、若しくは俺の背中にクッション状態の魔法を当ててくれたようだ。


 ミザリアにお礼を言いたかったが、そんな余裕はない。またもや口が開いたが、おそらく口から何か魔法又は種族特有の衝撃波?を発生させているのだろうと推測した。

 厄介そうなので、取り敢えずその射線の先から俺は逃れた。そうすると先程まで俺がいたすぐ後ろの木が、バキバキという大きな音と共に砕け散った。


 俺も負けじとアイスボールの投射を始めたが、軽く飛び上空に逃げられた。そして俺はグリフォンよりも高い位置にファイアーボールを生成し、上からの攻撃を試みる。俺から30m位の位置に生成出来るようになってきたのだ。それも察知されてしまい、飛ぶ事で躱わされてしまった。


 かなり厄介な相手だ。理由はくちばしから衝撃波と思われる何かを放っているので、俺は常に動いて逃げなければならない。向こうも最初の1撃以外当たらないので、苛立っているようだった。そして俺は次の手として、先ずは同じように上空にファイヤーボールを発生させ、そして地上からはアイスボールを生成し、奴が逃げると思われる方向に大量のアイスボールを投射する事にした。

 まずはファイヤーボールをけしかける。

 案の定少し飛び、ファイヤーボールを躱わしたが、そこへ先程発生させた大量のアイスボールが飛んでいく。上空に飛ばしている為に威力がかなり落ちるが、それでも奴に当たった段階ではまだ時速150 kmは超えていたであろうと思われる。そして2個のアイスボールが見事に当たった。


 どうやら羽根を折ったらしく、奴は墜落した。 そして俺は墜落した奴の所に転移し、一気にその首を切断する事により決着した。


 そう言えば転移を取得した直後のスキルの説明と、今のインターバルが異なっている。検証すると2回は制限なく使え、インターバルは2回使用後1分位である。たまに3回使えるのは謎だ。


 グリフォンの傷を見ると羽には鋭利な切り傷があった。なのでどうやらミザリアの魔法によって半ば切断されていたようだ。そして体の所々が焦げていた。俺のファイヤーボールは当たらなかった筈なので、誰かが魔法を放ち、それにより奴の飛べる場所が大幅に狭まった為に俺のアイスボールが当たった感じであった。


 俺が何も言わずとも皆俺が何をしようとしてるのかを察し、それに対してのフォローをしてくれていたのだ。魔力の量は俺がダントツで、魔法の強さで言うと俺の強さは正直なところ分からない。


大量の魔力を込める為に威力は強いが、同じ魔力量を込めた場合の威力は、ミザリアの方がおそらく上であろうと思われた 。但し魔法の総合戦力で言うと、やはり俺が飛び抜けている為に、戦いの中心は俺が担う事になる。


他の者は俺が十分に力を発揮できるようにフォローしてくれている 。

 今回フランカとゼツエイの 2名は、そのような魔法攻撃には参加できないので、後衛に対して自らの意思で護衛をしてくれていた。そう、特にゼツエイは飛んでいる相手に対しては殆ど出来る事がない。


 そして魔石の回収をしている時にふと思った。くちばしの状態からおそらくこいつはメスではないか?と。そしてお腹を切り裂くと、ソフトボール程の大きさの卵が3つ出てきた。俺はそれを取り出して収納に入れた。グリフォン自体を収納するのは無理であったが、この卵なら可能だ。成鳥の値段よりも卵の値段の方が高く売買されると言っていた筈なので、魔石を抜き取った後はグリフォンを燃やし、更に奥へと進むのであった。

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