第44話 修行の前夜

 今日泊る宿は、港の近くにある宿屋街にある所に決めた。なるべく高い宿を選んで探していた。それは値段の低い宿は宿泊する者の程度が低く、トラブルの元になる為に避けるようにとゼツエイから厳しく言われていたからである。幸い懐事情はかなり余裕があるので、空きがある中で一番高い所にした。


 寝室が4つある部屋で、何故か部屋割りは俺の意思とは無関係に決められていく。スイートと言う部類の部屋だ。


一番大きな部屋に俺とツインズとなり、後は1人1室だ。まあ、この状況で万が一はなかろうと添い寝として了承したが、果して俺は我慢する事が出来るのか?と自分に自信が無かったりする。何かって?手を出さないかだよ。お前はロリコンか?と言われても、見た目と実年齢が合わないんだよ・・・自制します。


 町は大いに賑わっていた。

 この町(島)を起点にして、周辺にはいくつかの小さな島があり、色々な冒険者が来ていて、中心部の島は魔物のランクが強く、周辺の島は魔物のランクが低いそうだ。


 ここの島々にしかいない魔物の肉が高値で取引されるようで、修行目的以外にも稼ぎが良い島として有名だった。魔物が生息するエリアの大半は上級者用で、一部中級用がある。一番大きい島(町のある島)は壁で区切られており、人の生息するエリアと魔物のいるエリアが別れている。


 俺達の泊まる宿は1泊20万Gもする。しかし、聞いている魔物の出没状況だと、倒した魔物の魔石で余裕で宿代はペイできそうだ。


 明日から魔物と戦う事にし、友安達は町に繰り出すが、ゼツエイとフランカは別行動を取るという。戻りの時間を決めて出掛ける事にした。


 俺はぶらぶらと町を散策しているが、イリアとミリアのはしゃぎ様にほっこりとしていた。俺はミザリアと腕を組んでゆっくりと歩いていたが、ツインズは走り回っていた。うん!元気で宜しい!


「ねえねえともちー!これ綺麗よ!似合うかな!?」


「これは友安様に似合うと思いますわ!」


 露店のアクセサリー等を見て回る。相変わらずイリアはフレンドリーで、ミリアは上品だ。

 ミザリアも目を輝かせてはいるが、落ち着いた女性然としており、時折簡単な感想を述べるだけだ。


 そうしていると、この場にそぐわない見た目の老婆の露店が目に入った。正確には、老婆の服がみすぼらしい訳ではなく、異質過ぎて浮いているのだ。しかし、気になるアクセサリーを発見し、魅入っていた。


「そこのお兄さんや、恋人達にプレゼントはいかがですか?うちは本物だけしか扱っておりませんよ!」


 3人がそれぞれくねくねしていたが、取り敢えずスルーした。


 俺はアクセサリーを見つめていて、ここにある5つのみ何かオーラを感じて、その5個、ブレスレットと髪飾りを買う事にした。オーソドックスなデザインで、装着者の魅力を引き立てる良い作りだ。


 3人はそれぞれ何かを買っていた。


「これとこれとこの5つをくださいな。お幾らですか?」


「ほう!これは驚きましたな。1番地味なのを選ばれるとは。何故か聞いても宜しいかのう?」


「うーん、なんと言うのかな?何かね、何て言ったら良いのかな、うーん、説明が難しいけど、この5個からオーラみたいなのを感じるんですよ。他には感じなくて、不思議な魅力を感じたんだよ」


「これはたまげた。わ、分かるのですな!?。ひょっとして勇者殿では有りませぬか?ちょっとお待ちくだされ」


 そうして腰掛けていたベンチじゃなくて、箱からブレスレットを6個出してきた。


 これにもオーラを感じる。


「あっ!凄いなこれ。これにも何か力を感じます」


「やはり本物の勇者様ですな。これらは魔道具ですじゃ。そうですなあ、勇者殿からお代は頂けませぬ。私共に代り、是非とも変異をお沈め下され。この日を来るのを待ち侘びておりました。勇者殿、いや仲野 友安様」


 俺は驚いた。名字はこの世界に来てから1度も口にしていないのだ。


「どうして俺のフルネームを!?」


「そうですな。その昔から伝わる一族の書物に記された預言書がありましてな、当時の族長が記録し、一族代々伝えられた内容なのですじゃ!小さな変異は時々起こりますし、前回の小さな変異は約40年位前でしたな。大きなのは1000年程前ですじゃ。そして今回は過去最大となると予言書に記載されております。変異の直前に一族の前に友安様が勇者として姿を現すと有り、我らにできる協力をする決まりになっておりました。こうした魔道具を準備して各地の修行に適した所に向かい、お渡しする準備をしておりました」


「分かりました。では有り難く頂戴します。ではこちらの純粋なアクセサリーも少し頂きますね。それとこれを」


 そうしてステータスカードを出して名前を確認して貰った。カードを返して貰う時に強引に大金貨を握らせて、アクセサリーを数個買っていったのであった。

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