第36話 夢

 俺はミザリアに高目の宿を確保するようにお願いしていた。そしてわざと金遣いが荒いと思われる話を周りに聞こえるように話している。


 懐に余裕がある素振りを見せるのが狙いだ。盗賊達が探りを入れていたりすると、格好の標的となるからだ。身の上話等のストーリーは、ゼツエイとフランカが御者兼護衛、ミザリアがお目付け役。イリアとミリアは俺の妾だ。俺は貴族の道楽息子であり、気ままな旅をしているとした。


これは、俺がゼツエイに盗賊ホイホイをしたいと言うと、ゼツエイが提案してきた事なのだ。俺が御者というのは下手過ぎて無理だろうからと、俺の役はドラ息子となった。

 俺はリスクを背負う事になる。。それは貴族が着るような防御力の無い服に身を包む事を意味するからだ。


 町に入る時だが、ギルドカードを提示したのと、簡単な犯罪者チェックのみで終わった。

 宿の場所を教えて貰い向かっていたが、俺達を見ている気配というか、視線を感じた。どうやら釣れたようで、明日辺りにお客様(盗賊)が来そうな感じだった。


 宿は上級宿に空きがあり、それは寝室が3つある大きな部屋だ。金貨18枚と物凄く値が張ったが、ここでケチると意味が無いので大盤振る舞いした。この額はこの世界の一般家庭の2ヶ月分の生活費に相当する金額だった。


 風呂も大きくかなり豪華だ。部屋割をどうするかになったが、各部屋にはベッドが2つ有るので、ツインズ、ミザリアとゼツエイ、俺とフランカになった。

 ツインズは大はしゃぎだ。イリアに至っては、「きゃあああ」とはしゃいでベッドにダイブしている。俺はなんだかなあと呟きつつ、イリアを叱りつけた。


「こらこらイリア!パンツ丸見えではしたないぞ。はしゃぐ気持ちは分からんでもないが、フランカとゼツエイもいるんだぞ」


「友安様のエッチ!お尻ばっかり見ているからパンツが見えるんですよ!見たいなら見たいって言ってよね!見せてあげるじゃなくて、お見せしますわよ!私の心の準備は既にできておりますので、いつでも申し付けてくれれば良いんですよ!」


 ミザリアが部屋の角にイリアを連れていった。


「イリア!友安様はしおらしい淑女が好みなのですよ!見せてしまうのは駄目ですよ。ぎりぎり隠して見えない方が友安様は見たくなるのですからね。振り向かせるにはまず見せない事からですよ!向こうから見せてくれと言わせるのです!」


「はい!お姉さま!簡単には見せないけど、隠さず覗きに来たり夜這いを待つのですね!」


「少し違いますけど、中々見せないのがコツですからね!安売りしてはいけません!下着をチラ見させるのもここぞという時のとっておきの武器ですよ!良いですね!?」


 等と話していて、ミリアも一緒に聞いているが、俺にしっかり聞こえてるいるのだと分かっているのか、いないのか不明だった。

 因みにミザリアとゼツエイは血の繋がりこそないが、事実上の親子なので同室だ。どうもミザリアのオシメを替えていたのはゼツエイらしい。


 食事も豪華なコース料理で、驚いた事に皆マナーが身に着いていた。

 当たり前だが、俺が一番駄目な感じだった。よくよく考えると、イリアとミリアは元々貴族なんだなと思い知らされた。


 俺は慣れない旅で疲れていた。先に風呂に入らせて貰い、早々に寝てしまった。


 夢を見ていた。

 誰かがそっと俺にキスをした。

 誰か分からないが、物凄く愛おしい気持ちで愛し合いたい衝動に襲われた。不思議な感覚だ。

 俺は目を瞑っている。ふと目覚めそうになる。夜中だろうか、おそるおそる目を開けると隣のベッドにフランカがいる。口にはキスの感触?がまだある。イリアかミリア、ひょっとしてミザリアが来てキスをしていったのだろうか?フランカが起きているようだったので聞いた。


「なあフランカ、誰か俺の寝顔を覗きに来たか?」


「いえ、誰も来ていませんよ。布団が落ちていたので、私が掛け直した以外は師匠の寝顔は誰も見ていないですよ」


「そうか。何かキスをされたような気がするんだけど気の所為かな?」


「うーん?誰も来ていないですから、きっと夢でも見たんでしょうね。どんな女性だったんですか?」


「よく分からないんだよ。でも何故か愛おしく感じて、会った事が有る気がするんだよ。変な夢だったな。なんとなくフランカに近い存在のような気がするんだよな。実はお前って双子の妹がいて、時々入れ替わっているなんて落ちは無いよな?」


「ええ。残念ながら妹も姉もいませんし、双子ではありませんよ。私が隣にいるのでその気配でそう感じたのでは!?」


「うん。確かに隣で寝ていれば気配は感じるよな。いろんなスキルを取ったからまだ慣れていないのかな?それとも疲れているのかな。悪いけど余程の事が無い限り朝まで寝かせてくれ。おやすみ」


 俺はおやすみを言ってから瞼を閉じると、今度こそ本格的に眠りに落ちるのであった。

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