ラブコメ・イン・ザ・ダーク【増量試し読み】

鈴木大輔/MF文庫J編集部

 あまガミユミリはボランティアでヒーローをやっていた。


 なんて書くと、彼女がまるで不真面目な人物のように聞こえてしまうだろうか? まあ実際のところ、あいつはお世辞にも真面目なキャラではなく、血ヘドを吐いて石にかじりついてでも世界を救う──なんて真似が、それこそ世界でいちばん似合わないヤツだったんだけど。

 とはいえ彼女は本物だった。

 間違いなくヒーローで、疑いようもなくボランティアだった。

 理不尽をなぎ倒し、不合理を蹴散らし、不可能をあざ笑う、孤高にして唯一無二の存在。ゆえにヒーロー。誰にも知られないがゆえにボランティア。


 これは、そんな天神ユミリの物語で。

 そして、僕が世界の敵だったころの物語だ。


 ……ああダメだ。

 これじゃ言いたいことの万分の一も伝わらない。

 ええともう一回説明すると、僕の名前はとうジローで、天神ユミリの恋人でした。付け加えるなら身体の関係もありました。すんごいベロチューもしたし、それ以外のことも、まあいろいろと。……いやいや、そんないいものじゃないから石を投げないで。自慢してるわけでもないしマウントを取りたいわけでもない。ダメだな、どうも彼女の話をしようとすると、僕は自分のペースを保てなくなる。


 よし。

 気持ちの切り替えOK。

 とにかく話を始めてしまおう。始めてしまえば何とかなるさ。最後にこの物語の内容をひとことでまとめて、それでこのプロローグらしき駄文を〆させていただく。


 この物語は僕こと佐藤ジローが、天神ユミリを殺すまでのお話です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る