第8話初戦闘2

 ウォールラビットとの戦闘を終えたリュウジンは適当に散策していた。


 新月流は超実戦派の武術の流派である。

『常時戦闘』の考えの元、剣術だけでなくあらゆる武術をおさめ、ほとんどの者は剣術を主体とするが基本なんでもありの武術模擬戦を繰り返してる。

 成人と同時に紛争地帯に行き無事に戻って来れてやっと師範になる資格があるとみなされ、それまでは門下生扱いでしかない。

 また当主の座を賭けて挑戦できるのは師範でないといけないので、現状リュウジンには当主になる資格はなく、また実力もまだまだであった。

 2年先の成人の儀の命のやり取りを乗り越えなければならない。


 そのためリュウジンはダメージを受けたときの状態をできるだけ実戦に近くするために痛み80%ステータス低下20%の設定にしていた。

 実際に落ちるステータスは20%であるが痛みによって動けなくなることもあるので、他の設定に比べて難易度が高くなっている。

 また、発売当初はこの設定でやろうとしている人も一定数いたが、痛みに耐性がないと死の危険に脳が耐えきれないと判断され強制ログアウトされることが相次いだため、今ではこの設定でやっている人はほとんどいない。


 リュウジンは後ろから何かが迫ってきているのに気づいているが気づいていないふりをして歩いていた。

 後ろから迫っていたのはゴブリンの群れで斥候としてきていた若いゴブリンが功を焦ってリュウジンに奇襲を仕掛け、手に持っている棍棒で殴りかかってきた。


「奇襲をするならその殺気は消すべきだったな。近づいていると教えているようなもんだぞ?」

 当然のように躱したリュウジンはすぐには斬らず、構えただけだった。

 新月流の技をどこまで再現できるのか確かめるために人型のゴブリンで試し斬りしようと考えていた。


「少し実験に付き合ってくれや」

 そういって無造作に1歩踏み出した。


 ゴブリンのほうは奇襲が失敗し動揺しており後退りしていた。

 ――新月流『幻斬』――


 リュウジンが上から振り下ろしてきたのを見たゴブリンは棍棒で咄嗟にガードしようとした。


「・・・グギャッ!?・・・」

 ガード出来たかに思えたが、まるですり抜けたかのように棍棒は切れておらずゴブリンだけが真っ二つになっりゴブリンは訳もわからないまま絶命した。


 ――グギャ

 ――グギャギャ

 そこに斥候が戻ってこなかったからかゴブリンの本隊が現れ臨戦態勢をとる。


 ゴブリンはざっと10体前後おり、チームとして連携が取ろうとしていた。

 前衛と後衛に分かれたゴブリン達は前衛7体で一斉にリュウジンに襲いかかってきた。


 ゴブリンが目の前に迫り棍棒を振り下ろすのをリュウジンは冷静に見ながら


 ――新月流『乱斬』――


 棍棒を刀で受けると同時に相手の力の流れを乱し態勢を崩し首を刎ねた。

 間髪入れず2体のゴブリンが同時に襲いかかってきた。


 リュウジンは刀を構えながら2体のゴブリンに対して全力の『威圧』をした。

 すると、威圧に当てられたゴブリンは一瞬体が硬直し無防備となった。

 その隙を見逃すはずもなく、2体の首を一瞬で刎ね飛ばし、更に後ろから来ていた4体のゴブリンもそのままの勢いで即座に斬り殺した。


「ふん。雑魚だな。だがモンスター相手にも威圧が効くなら戦闘の幅は広がりそうだな」


 ゴブリン達はリュウジンが遥か格上の相手であると理解し、逃げることを考えていた。

 しかし背中を見せれば即座に殺されることも理解しているので動けなかった。


「どうした?おい、来いよ!一度戦いを始めた以上どちらかが倒れるまで終わらねぇぜ?!来い!」

 言葉が理解できているのか、大声に触発されただけなのかはわからないが3体のゴブリンが一斉に走ってきた。


「そうだ!それでいい!!」

 リュウジンは刀を納刀し、素手で構えを取った。


 そしてゴブリンの顔面を全力でパンチし、その勢いのまま別のゴブリンの首に回し蹴りをし立ち止まった。

 殴られたゴブリンは顔面が陥没しピクピクと動いてはいるが立ち上がることは出来ず首を蹴られたゴブリンは首があらぬ方向に向いており即死していた。


 そして残りのゴブリンが棍棒で殴りかかってきたがリュウジンは一切防御せずに頬に攻撃を受け殴り飛ばされた。


「・・・ッぺ」

 少しふらつきながら立ち上がった。


「なるほど。ダメージを負うとこんな感じか。普段の修練とそんなに変わらんな。大体わかった」


 そう言いゴブリンの首をいとも簡単に刀で刎ねとばした。

[ゴブリンの肉]×7

[ゴブリンの棍棒]×2

[ゴブリンメイジの杖]×1

 リュウジンはステータスダウンを確認しようと思いステータスを確認した


 ――リュウジンーー

 人種:ヒューマン

 職業:

 HP:72/124

 MP:56/56

 ST:102/132

 STR:40+25 (-24)

 VIT:18 (-10)

 INT:27

 AGI:28 (-16)

 LUK:30

 ステータスポイント:2

 ステータス減少時間残り:216秒

 ―スキルー


 ―称号―


 ――――――


(ん?20%減少ならSTRは-8じゃないのか?

 他の下がっているものも単純に20%下がっているわけではないな。

 この辺の仕組みもまた凛にでも聞くか。

 しかし、あの一撃でHPが52も減ったのか。

 現実世界でならあの程度の攻撃を3回くらった程度で死ぬことはないだろうが、まぁやっと現実との違いらしきものが見つかったな。)

 そう思いなんとなく答えが間違っている問題を見つけたような気持ちになり上機嫌になっていた。


(ステータスポイントは変わらず2か。このポイントも最初からあるものなのか何かで手に入れたものなのかわからねぇんだよな。

 そしてさっきは見間違いかと思ったがHPの最大値が伸びているな。

 戦闘をすることで上がるのか?

 わからん。

 あとはST、おそらくスタミナのことだろうがこれが0になったときにどういった状態になるのかもいつか確かめないといかんな。)


 そしてリュウジンは初日の戦闘を終えた。

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