異世界での選択肢①
ラプラスと特務02と特務03は用意された部屋の中で情報共有をしていた。
「お疲れ様、二人共。早速だけど現状をどんなふうに理解している?」
「過去か平行世界に飛ばされてデストロイヤーが強くて大ピンチっで感じかな」
「うん、その認識で合ってる。それで、私達はどう動いたほうが良いと思う? 最終目標は元の世界への帰還だとして、何をすべきだと思う?」
「そうだね、まず私達3人がいるってことは特務04もいるってことは確定でいいと思う。だから彼女を捜索しつつ、元の世界に戻るための方法を探る」
「この世界への技術供与はどうしますか? 私は全ての情報を開示して信用を得るべきだと思うんですけど」
「そうだね、特務03の言う通りある程度の情報は開示したほうが良いと思う。だけど現状、私達の待つ手札は純粋な戦力と情報しかない。取引で有利になるように仕向けてから出ないと渡せないかな」
「だね。少ない手札は有効活用しないと。流石に一気に全部はキツイと思う。といっても渡せる情報は何があるかなー、こっちの世界で再現できるレベルのものじゃないといけないわけだし」
「後は積極的な殲滅作戦への参加で、信用を得るというのはどうでしょうか?」
「うん、それは大切だね。私達がこの世界に有益だと思ってもらわないといけないわけだし」
「別の世界の人間ってかなり疑わしいしね。あまり出歩かないほうが良いか」
「こんなところかな。方針は決まったね。段階的な技術供与をしつつ、戦闘に積極的に参加、代わりに特務04ちゃんと元の世界への帰還方法の模索を頼む、と」
「そういえば真昼はラプラスって呼ばれてたけど、あれはなんで?」
「この世界の一ノ瀬真昼と区別するため。ラプラスは私の代名詞だしね。二人は特務02と特務03で良いんじゃない?」
「了解」
「わかりました」
「じゃあ草案をまとめて、提出してこようかな」
「ああ、それはこっちでやっておくよ。交渉とか真昼は確か不得意じゃなかっけ? ラプラスの力で脅迫されたら信頼もクソも無くなるからこっちに任せて」
「酷いこと言うね、わかった。頼んだ」
「はいはーい」
ラプラスは部屋を出て、横浜衛士訓練校の中を歩く。すると偶然、哨戒任務を終えたアールヴヘイムの面々と出会った。
「お疲れ様、みんな」
「あ、うん。ありがとう」
「何か発見はあった?」
「残念ながら何も」
「そっか。ごめんね、引き止めて。休憩いってらっしゃい」
そう言って離れるラプラスの背中に、引き止める声がかかった。
「ラプラス様、少しお時間よろしいかしら?」
「阿頼耶ちゃん? 良いよ。個室行く?」
「ええ! ぜひお願いします!」
それを見たアールヴヘイムの面々はボソボソと会話する。
「阿頼耶ちゃん相手に個室に誘うなんて」
「ラプラスさんってもしかして阿頼耶ちゃんのことあまり知らない?」
「別世界だから性格違うのかも」
「大丈夫かな?」
「大丈夫でしょ、多分」
そんな声を聞きながら、ラプラスは自身の部屋に案内する。
「好きなところに座って」
「好きなところ……」
「ベットとか」
「い、いえ! 任務を終えたばかりで汚れているので!」
「気にしないで良いけど、じゃあ、こっちの椅子に座ってもらおうかな」
「わかりました」
「ガチガチだね、緊張してる?」
「少し」
阿頼耶が椅子に座り、ラプラスは緑茶をカップに入れて出す。
「まぁ、ゆっくりしていって」
「はい」
そしてラプラスの方から話を切り出した。
「それで、呼び止めた用件って?」
「あの二日前の戦いのとき、助けて頂いたことを改めてお礼を言いたくて」
「ああ、なるほど。気にしないで。誰かを助けるのはいつものことだから」
「それでも! 私は救われました。ありがとうございます。おかげで助かりました」
「うん。受け取りました。律儀なんだね、阿頼耶ちゃんは」
「それでその、ラプラス様はしてほしい事とかありますか?」
その言葉にラプラスは目が点になる。
「してほしいこと?」
「はい、その恩返しになればと思って」
「ああ、そういう。うーん、あるといえばあるし、ないといえばないんだけど」
「私にできることなら、何でも。この阿頼耶、体も捧げます」
「ふふっ、ありがとう。でもそれ少し下心あるよね。もしかして私のこと好きになっちゃった?」
「はい。あの時の凛々しいお姿を見てから、私の心は貴方の事で一杯です」
「阿頼耶ちゃんは可愛い子……くすみちゃんとか好みな気がしたけど、私も範囲内なんだ?」
「くすみも可愛いけど、食べちゃいたいけど、それよりも貴方のものになりたい」
「情熱的だね」
「嫌だとは思われないんですか? 普通はこんな風に言われたら怖がるか、気持ち悪がられるかと」
「それは体験談?」
「はい」
「そっか。ベットに行こうか」
「えっ、え!?」
「ごめんね。少し疲れちゃって。横になりたいんだ」
「あ、はい。それなら」
ラプラスは上着を脱いで、ハンガーにかけたあとベットで横になる。阿頼耶は遠慮がちにベットの端に腰掛ける。
「阿頼耶ちゃん。少し話を聞いてくれる?」
「はい」
「私はね、元の世界ではラプラスの英雄って呼ばれてたんだ。絶望的な戦況を覆し、ネストを潰し、G.E.H.E.N.Aを支配下において浄化した。最新鋭の戦術機と生体改造を受けて、誰よりも危険な道を進んで安全な道に舗装する立場にいた」
「そうなんですか」
「仲間が死ぬのは当たり前、それでも私は努力したんだ。少しでも人が死なないように頑張った。頑張って頑張って頑張った。報われると信じて」
「それは、報われたんですか?」
「どうだろう。分からない。出来ることをやってきたつもりだけど、それがどれたけ世界に貢献できたか分からない。でもね、明確にわかってることはあるんだ」
「それは?」
「私は、人や衛士の枠組みを超えて、化け物になっていく感覚だけがあった。誰にもできない事が出来る、それは誇らしさと同時に恐怖になった。ねぇ、阿頼耶ちゃん。貴方には私はどう見える?」
阿頼耶はラプラスに馬乗りになって、ラプラスの体を舐めるように触っていく。ラプラスは少し声を上げたが抵抗しなかった。
「私には人に見えます。貴方の持つ体の熱は人のものです。貴方の心が持つ不安は、人だから抱くものです」
「そっか」
「ねぇ、ラプラス様。私は貴方が欲しい。こんな可愛らしい外見とは裏腹に、内に抱えた重い心を溶かして差し上げたい。貴方のそばで。貴方を支える杖になりたい」
「出会って間もないのに、凄い入れ込みようだね。そんなに私って魅力的?」
「壊れてしまいそうな心を、硬い鎧で身を守る貴方を知って、私は貴方の心に入りたい。貴方と一つになりたい」
「すごい口説き文句だ。ねぇ、阿頼耶ちゃんのことを聞かせてよ。阿頼耶は女の子が好きで、持てるって聞いたよ。中学時代には確かに恋人な四人いるって」
「そうですね、私は強くて、可愛くて、それでいて弱い部分を持ちながら立ち向かう子が好きです。くすみも、今まで関係を持った子も、その側面はありました。単純に顔が良いというのもありましたけど」
「顔か」
「顔は大切ですよ、ラプラス様」
「じゃあ私は落第かな。可愛らしいって顔つきじゃないでしょう」
「ご自分でご覧になったことはないんですか? 肌艶や髪質は最高級で、可愛らしいですよ。そして今、あなたの内側を知りました」
阿頼耶はラプラスの耳元で囁く。
「だからこそ、貴方が欲しい。今までの子が悪いわけじゃないんです。ですが、貴方は魅力的すぎる。尽くしたいし、尽くされたい、と思ったのは初めてです」
「私の体は貧相だよ」
「でも、相性は分からないでしょう? 少しだけ味見させてください」
「それは……そうだね。少しだけ、やってみようか」
「貴方は私のことを気持ち悪いって思わないんですね」
「私も、女の子が好きだから気持ちはわかるよ。でも一つ、お願いがあるんだ」
「なんですか?」
「手を握っていて欲しい。肌を重ねるときも私の心を受け止めるように、手をつないでいてほしい」
「わかったわ、真昼」
「今はラプラス、だよ」
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