アイスは甘く、すぐ溶ける。~あの夏、あの人はわたしの心の中に~
こんぎつね
夏休みは避暑地ですごそう!
夏休みか....
夏休みといっても特に友達と遊ぶ約束もない。
『友達がいないのか? 』ってパパは心配そうに言うけど、そんなことない。
いるよ、友達くらい。
学校はそれなりに楽しいし、友達とおしゃれやテレビの話や今人気のアーティストやアイドルの話だってする。
でも、大きな口をあけて涙が出るほど笑っても一瞬、素に戻る自分がいる事を知ってるんだ。
もちろんそんな事、みんなには言わない。
特に
彼女だけは特別だから。
「ねぇ、
「だって静かじゃん。それに落ち着くしさ」
「そんなの隠居した後にいくらでも楽しめばいいじゃん! 私は智夏と遊びたいのに! 」
「ならさ、一緒に行く? 」
「一緒に行ってアレするんでしょ? やだよ。前付き合って酷い火傷になったもん」
「経験はひとを賢くするもんだよ。長袖にフェイスマスク、さらに麦藁帽子を被れば
大丈夫」
「まったく何でそんなに釣りばっかりするの? 結局、いつも釣れないくせに」
「なんかね。落ち着くんだよ。海を見て波の音を聞いているとね」
「ふ~ん.... で、いつ出発? 何時に智夏の家に行けばいいの? 」
「7/31に9時くらいにおいでよ。莉子が来なくてもひとりでいくから遅れないようにね」
わたしは夏休みにはいつも伊豆の叔母の家に遊びに行くことが多かった。
叔母の家のみかん畑からは伊豆の海が一望できる。
みかん畑を降りていき道路を横切ると、堤防がある。
わたしを待つように必ずある、わたしの特等席だ。
そこに座って釣り糸を垂らすんだ。
いや、釣りなんかしなくても別によかった。
海を見に行ってるんだから。
まぁ、釣れたなら、それはそれで楽しいけどね。
本当は ..本当は、ちょっぴり他人が怖いんだ。
人ってどこまで信じられるのか、わたしには判らなくなってしまったから....
友達ってどこからが友達でどこからがクラスメイトなのかな。
周りがみんな、そんな存在とするなら『沢田莉子』、彼女だけは友達と言えるだろう。
莉子は、なぜか身勝手なわたしに振り回されては泥を被ってしまう不器用な女の子。
酷い目に合っても懲りずにわたしに付きまとうように一緒にいようとする。
だから、放っておくことができない。
「ねぇ、待ってよ。重いんだから! 」
「なんで、そんなに荷物持ってきたの? 海外旅行にでも行くつもり? 」
「だって2週間だよ。こんな長期旅行、私初めてだもん」
「伊豆っていっても周りにコンビニあるし、服なんかおばさんの家で洗濯すればいいじゃん」
「チッ、チッ、チッ、だめだなぁ。智夏は.. 」
「何が? 」
「だから言ってるじゃん。今が私たちの夏だよ。もしも海辺で『莉子のカイト君』に出会ったらどうするの? 毎日、同じ服? そんなのあり得ないから」
「あ、そ。でも、その心配なら無用だから」
莉子のアイドル妄想好きには困ったものだ。
「あ、智夏、こっち、こっち、このエレベーター使おうよ! 」
「エスカレーターで先行ってるから」
まだ笹塚駅だっていうのにもうこの調子。
まったくこの先どうなるやら....
・・・・・・・
・・
ニャー..
「なんで!? 何なのここはー!! 」
「堤防だよ! 」
「智夏、あのね.. 猫ちゃんしかいないじゃん! ここ! 」
「だから言ったでしょ。『ああ、莉子のカイト君に会ったらどうしよう』そんなの心配ないってね」
「笑ってる場合じゃないよ! 智夏、ねぇ、お願いだからビーチに遊びいこう!? 」
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