分からない思い

 フィファーナがギン達に現在の帝国の情勢、そして過去を話している頃、エイム達は船の甲板にいて、エイムがウィルに尋ねていた。


「ウィルさん、前に海がざわついているっておっしゃっていましたけど、今もそうなんですか?」

「ああ、だが前よりも少しだけ落ち着いてはいるけどな」

「それってカイスさんが皇帝に即位して帝国がまたまとまったからなんですか?」

「皮肉だがそうしか考えられねえ、まったく俺達がギガスの殺害を止められなくて海がざわついたってののに、カイスが帝国に即位しただけでこんなに海が落ち着くなんて、一体俺達のしている事って……」


 海の声が聞こえるウィルにとっては自分達の行動がどれほど平和に近づいているかが疑問に感じ、思わずぼやきそうになるがエイムがそんなウィルに対して言葉を放つ。


「でもウィルさん、今度こそ私達がカイスさんを説得できれば、私達のした事は無駄にはなりません。いえ無駄にしてはダメなんです」

「エイム……、そうだな、ここまで来たらもう俺もやるしかねえな」

「はい、頑張りましょう」


 エイムとウィルがやり取りをしている中、プラナがヨナに声をかけていた。


「あの、ヨナさん、ちょっといいですか?」

「あたしに何だい?」

「ヨナさんがそのグラッスの王様を思っているけど、相手のお気持ちは分からないっておっしゃっていましたよね」

「そうだけど、まさかあんたまであたしをからかうの?お願いだから止めてよ!」


 ヨナはプラナにまで自身の恋心についてからかわれると思い、思わず声をあげるが、プラナの発言はヨナの予想とは違ったものであった。


「あ、いえ、そうではなくて私もカイス様のお気持ちは分からないので、何というか少し親近感があって……」

「え、あ、ああ、そうなの、それならそうだって言ってよ」

「これからもしかしたら私はカイス様と戦はなくてはいけませんし、例え上手くいったとしてもカイス様が私を受け入れてくれるかどうか……、だからヨナさんは生きて帰れたら自分が後悔しないようにしてください」

「ん?ああ、ありがとう……」


 ヨナはカイスもプラナを思っている事を知っているが、それを言い出すわけにはいかない為、とりあえず自身に対する発言の返答にのみとどめ、ヨナの返答を聞くとプラナは久々に会う帝国の兵の挨拶にも赴いていた。プラナが離れたタイミングでミニルがヨナに近づき声をかける。


「大変ね、本当の事をプラナさんに言えないのは」

「そうだよ、この間の夜も思わず言いそうになって止めたくらいだからね」

「そんな事があったのね、でもプラナさんの為にもカイスさんの説得は成功させなくちゃ」

「ああ、あそこまであたしを気遣ってくれるし、頑張らないわけにはいかないよ」


 プラナが自身の気持ちに寄り添っていると感じたヨナは奮起を誓うのであった。

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