極上のエサ

 ホセの発言を受け、プラナが孤児院を出ようとするとマリンとアルに引き留められて決心が鈍っていた。


 そんな時、魔物の襲撃があり、プラナは火の魔法で魔物を燃やすが、更に別の獣人の魔物が近づいていた。


 そしてその魔物がなんと言葉を発したのだ。


「あのシルバーウルフの動きに即座に反応するとは、人間にしてはできるようだな」


 獣人の魔物が言葉を発するとマザーが反応を示す。


「あの魔物、私達の言葉を話しています」

「すると、知性の高い魔物、魔族……」


 マザーの反応に対し、プラナが自身の見解を述べると、獣人の魔物がプラナに対して言い放つ。


「ほう、我々の存在がまさかただの娘にまで知られているとはな」

「ただの娘だと思って侮っているようだが、私を甘く見ない方がいいぞ」


 突如鋭い顔つきと強い口調で話すプラナにマリンは少し恐怖を覚える反応をする。


「おねえちゃん、なんか怖い……」


 マリンがそう呟く中、プラナは魔物に対し質問をぶつける。


「貴様らの目的は何だ?何故この孤児院を襲ったのだ?」

「ふっふっふっ、ハハハハ!」

「何がおかしい!」

「ふっ、俺にとっては子供の断末魔は何よりの極上のエサなんだよ!この孤児院はそんな俺にとっては好都合な場所だ」


 孤児院が自らにとって極上のエサが多くあると豪語する魔物は更にもう1つの理由を話す。


「それに、このミッツ教団の祖ともいえる奴らは我ら魔族の弾圧をしたので、その復讐も兼ねてだ、ここのガキ共を皆殺しにすれば神官戦士共をあぶりだせるかもしれんからな」

「それはあなた方が人々を苦しめたからです、人々を救う為に我らが遠い先達はあなた方と戦ったのです」

「黙れ、我らの恨みをここではらさせてもらうぞ」


 マザーと魔物の言い合いのなか、ホセが言葉を発する。


「孤児院の子供を殺すというならそれを許すわけにはいかん、おい!」


 ホセが呼びかけた先にはもう1人の兵士がおり、ホセはある事を伝える。


「お前はすぐにスップに戻って隊長にこの状況を伝えろ!」

「お前1人で大丈夫なのか?」

「このまま2人で戦ってもジリ貧になるだけだ、兵団が来てくれれば何とかなる」

「分かった、死ぬなよ」


 そう言ってもう1人の兵士はこの場を離脱し、ホセは更にマザーに呼びかける。


「マザーは妹達を連れて中に入って下さい!ここは自分が何とかします」

「お兄ちゃん!お兄ちゃんもマリンと一緒に逃げようよ!」

「マリン、お兄ちゃんはマリンやお友達を守る為に戦うんだ。大丈夫だお兄ちゃんはとっても強いからな」

「でも……」


 兄を心配するマリンの手を引いてマザーは院内へと入っていく。アルもマリンの背中を押してマザーのフォローをしている。


「お兄ちゃーーーん!」


 マリンが叫びと共に、孤児院に入っていくのを確認して戦闘態勢に入ろうとするとホセの目に入ったのはプラナであった。


「おい、あんたも逃げろ!もうあんたは俺達とは関係ないんだから!」

「いえ、ここの子供達はこんな私に良くしてくれました。この子達は命に代えても守らなければ」

「……勝手にしろ」


 認めたくないが認めざるを得ないプラナの心意気が少なからずホセの心にも伝わった瞬間であった。

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