父と娘の本心

ヨナがグラッス国王マルスと穏やかな会話をしている中、その状況にウィルとミニルが反応をしている。


「何だよヨナの奴、がらにもなく緊張していやがるな。さすがのあいつも王様の前じゃかしこまるんだな」

「うーーーん、私はそういうのとは違うと思うんだけどな。はっ!もしかして……」


 ミニルが何かを言おうとしたら、ヨナとマルスにダリルが話しかける。


「陛下、失礼します。ヨナよ、本当に助かった。礼を言わせてくれ」

「父さん、ううん、娘のあたしが助けないで誰が助けるのさ」

「あの時、わしはお前に汚れ仕事を押し付けてしまった。だから見捨てられても仕方がないと思った。それでもお前は……」

「父さん、今考えたら父さんのしたことは正しくないのは確かだよ。でもさ……」


 少し、ヨナは間を置くが顔をダリルに向けて話し始める。


「ある奴があたしに言ったんだよ。あの時父さんの指示で金を巻き上げようとしたんだけど、失敗して、そいつがあたしの前に現れた時に」

「その者に何を言われたのだ?」

「最初は説教臭い嫌な奴だと思った。でもそいつはあたし達が2度と過ちを犯さずに済む方法を一緒に探してくれるって言ってくれたんだよ。そんな事誰にも言われた事がなかったのにさ」

「ヨナ……」


 次の瞬間、ヨナは目を潤ませながらダリルに思いを打ち明ける。


「あたしもまだ正直見つけられていないよ。でも、それでも父さんにもそんな方法を見つけてあげたい」

「ヨナ、しかしわしのような弱く汚い人間がそんな方法を見つけられるのか……」

「別の奴はこうも言ったよ、どんな人間も憎しみ、恨み、絶望、妬みのような感情に囚われるけど、それを乗り越えられるのも人間だって」

「ヨナ、成長したな、わしなんぞより余程お前の事を考えてくれる者に出会えたのだな」


 ダリルは娘の成長を喜ぶと共に、今まで自身がヨナの為に何もできなかった申し訳と合わさり涙があふれていた。


 そんなダリルにヨナは希望あふれる言葉を届ける。


「父さんが乗り越えようという意志があれば、あたしはいくらでも支えるよ、だってあたしは父さんの娘なんだから」

「ヨナ……こ、こんなわしを、父と……ほ、本当に……わしには……もったいない娘だ……」


 様々な感情がうずまき、ダリルは涙を止める事ができなかった。そんなダリルとヨナにマルスが声をかける。


「……ダリル、ヨナ、お前達の気持ちは分かった。しかし、ダリルよ、ガンシルに揺さぶられたとはいえ、国王としてお前に処分をくださなくてはならない」

「……もちろんです、陛下……」

「王様⁉」


 ようやく本心を話せた親子であったが、ダリルに処分がくだろうとしていた。

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