誇りと命と

 ギンは自らと家族に対する憎しみが消えないプラナを自らの手で斬るという決意をする。


 他の仲間は強い決意をしたギンを制止することも、言葉をかけることもできず、プラナの方に向かうギンをただ見守るほかなかった。


 ギンの接近を目にしたプラナはカイスに対し、懇願をする。


「カイス様、あの男は私が始末します!」

「何を言うかプラナ!お前1人でかなう相手ではない、我らも加勢をする」

「いいえ、あの男だけは我が手で葬らねばなりません!例えこの命と引き換えにしようとも!」

「……分かった!プラナ卿よ貴殿にあの者との決闘を魔導騎士団長の名において許可する!」


 カイスが決闘の許可を出すと、プラナは礼の言葉を述べギンの方へと向かっていく。


「ありがとうございますカイス様!必ずやあの者の首をカイス様に献上いたします!」


 プラナがギンの方に向かっていくと副官であるトーラスがカイスに声をかける。


「カイス様!よろしいのですか?このままではプラナは確実に奴に討たれます!」

「いいわけなかろう」

「え⁉」


 カイスの言葉にトーラスが驚くとカイスが小声で自らの真意を話す。


「トーラス、これはプラナにとって必要な事なのだ。自らが憎む兄を自らの手で討ち取ることで憎しみから解き放たねばならん」

「で、ですが」

「プラナが命を奪われそうならば、私は加勢する。例え私とプラナの誇りが汚れようとも、プラナを失うわけにはいかん」

「カイス様……、その時は我らも加勢いたします。我ら魔導騎士団、心はカイス様と共にあります」


 トーラスの忠義の言葉にカイスは謝罪と礼の言葉を述べる。


「すまぬ、感謝する」


 カイスとトーラスがやり取りをしている中、遂にギンとプラナが相対する。


「改めて言うぞ、お前が帝国の騎士として立ち塞がるなら、俺はお前を斬る」

「私はお前を殺さねばならん。貴様の命を奪い、私を捨てた家族を全てこの世界から消してやる!」

「俺の剣でお前の憎しみを断ち切ってやる。お前の命ごとな!」

「ぬかせ!」


 互いに言葉を発するが間合いをはかり、すぐには剣の打ち合いにも、魔法の撃ち合いにも持ち込まない。


 特にプラナは腕力と剣技ではギンに劣り、魔法を放つにしてもギンの魔法剣が範囲は小さいものの魔力障壁のような役割があり、無駄撃ちに終わる公算が高い。


 しかもギンにはバンスですら退けたフレイムボムと魔法剣の合わせ技まである。


 明らかに不利な条件で決闘に臨んだプラナに何かしらの秘策があるのか?


 また、ギンはこのまま修羅の道を歩むのか?

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