激化か終結か?

 ブロッス帝国バンス将軍がギンの剣の前に倒れ、魔導騎士団長カイス、そしてプラナに遺言を残すとそのまま息絶えた。


 その様子を目の当たりにしたカイスは副官であるトーラスに命じる。


「トーラス、バンス将軍の遺体を本国まで運ばせろ。くれぐれも丁重にな」

「はっ!誰かバンス将軍のご遺体をひとまずこの場から離せ」

「はっ!」


 急きょ、戦場に来たため、馬でしか運べないが馬では転落の恐れがある為複数名で抱えながら徒歩で戦場をあとにする。


 バンスの遺体が戦場から離れていくのを確認するとカイスはギンに対し言葉を言い放つ。


「ギン!いずれ貴様らとの決着はつけてやる。覚えておけ!」

「カイス、やはりお前は戦いを止めるつもりはないのか?」

「当たり前だ!ここで剣を収めてしまえばバンスだけでなく他の者の犠牲も無駄になってしまう」

「だがお前達が帝国1強を目指す過程で、今日みたいなことがあと何度あるか分からない。それでも……」


 ギンの言葉を途中で遮り、プラナが怒りの言葉を放つ。


「黙れ!貴様自身がバンス将軍の命を奪っておいてそのような事が良く言えたものだな!恥を知れ!」


 プラナの言葉に対しヨナも怒りの感情が湧き、プラナに対し抗議をする。


「恥を知れだって!それはあんた達の方だろ!」

「何だと!」

「あんたらだっていろんな人の命を奪ってきたじゃないか!それを自分の所の将軍がやられたらその相手を罵倒するなんて、あんたらの方がよっぽど恥知らずだよ!」

「貴様、言わせておけば!」


 怒りのあまり剣を抜こうとするプラナをカイスが制止する。


「やめろプラナ!我々には今はすべきことがある」

「しかしカイス様、この者は我らを侮辱したのです……」

「プラナ、理由はどうあれ我らも多くの命を奪ってきた。それに対する非難は甘んじて受けるべきだ」


 その言葉にプラナは黙り、カイスはギン達に対し言い放つ。


「ではさらばだ」


 そう言ってカイス率いる魔導騎士団はその場を離脱していく。


 魔導騎士団が離脱するとエイムがルルーに対しそっと話しかける。


「私達とあの人達が分かり合う事は無理なんですか?」

「それは……」


 返答に困るルルーと質問をしたエイムに対しムルカが声をかける。


「多少強引でも力づくですべてをまとめあげようとする帝国と我々が分かり合うのは難しいかも知れん」

「ムルカ様」

「だがどういう結果になろうとも我らはこの戦いを終わらせねばならん」

「はい、私達はその為にいるのですから」


 バンスの死は益々ギン達と帝国の戦いの激しさを増すきっかけか?もしくは戦争終結の近道か?


 だが誰もが1日もはやく戦争を終わらせたいと思っている。それだけは確かだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る