気になる出自

 邪龍伝承の舞台が終了し、しばらく次の催し物の準備時間となった為、観客達はその場に留まる者、一度広場を離れる者と様々だ。


 そんな中、ギン達も移動を開始し、エイムがギンに話しかけていた。


「ギンさん、どうでしたか?邪龍はどなたかが幻覚魔法を使用して見せていたんですけど、……や、役者さんってすごいんですね……あんな……いきなり……人前で……だ、抱き合うなんて……」


 役者同士の抱擁に戸惑い、照れ、動揺を隠せないエイムであったが、ギンはその場面からある可能性を話す。


「もし、俺のルーツがあの剣士にあるのなら、今の俺の能力のことは説明がつくかもしれない」

「それってどういうことですか?」

「伝承では魔法剣とは剣士、そして魔術師の魔法を合わせ邪龍を葬ることに成功した。俺は1人でその技を使うことができる。もっとも魔導騎士団のカイスを倒すのにあれだけの苦労をするから俺が彼らほどの力とは思えないがな」

「伝承では2人のその後は分かりませんでした。でもあの2人が結ばれてギンさんに繋がるかも知れないってことですか?」


 エイムはギンの言葉からギン自身が伝承の剣士、そして魔術師が結ばれその後も血脈が繋がれたからこそ生まれ、2人の能力を受け継いだ存在として今この場にいるのではないかと尋ねた。


「あくまで本当に俺のルーツが剣士だという仮定のうえに成り立つ説ではあるがな」

「でも、どうして2人はプレツを出て、ルワールに行ったんでしょうか?」

「2人がルワールに行ったとは限らない、子供か孫の代で行ったかも知れないしな」


 ギンとエイムが話している時にブライアンが口を挟む。


「お前ら、盛り上がっているところ悪いけどよ。2人がくっついたのだって、大衆向けの作り話かも知れないんだぜ、そもそも剣士と魔術師の性別は伝承にも書いていなかったじゃねえか」


 ブライアンの話を聞いて、エイムが言葉を返す。


「でもブライアンさん、ギンさんは魔法剣が使えるので、お2人の子孫と考えるのはあまり無理はないと思います」

「確かにギン以外で魔法剣を使える奴はいねえから。そうかも知れねえけど、まだ決めつけるのは早いと思うぜ」


 ブライアンの言葉を聞いてムルカが自らの意見を述べる。


「ブライアン殿の言う通りだ、その事に関しては司祭様が更に調べて下さっている。またプレツに戻るようなことがあればお聞きすると良いだろう」


 ムルカの発言にギンが言葉を返す。


「そうですね、俺も少し芝居に引っ張られたかも知れません。すまなかったなエイム、変なことを言って」

「あ、いえ、ギンさんが色々気になるのも仕方ありませんよ、私は大丈夫ですから」


 ギン達が話している中、ルルーが一同に声をかける。


「みんな、私とミニルは少し、さっきの一団に話したいことがあるから少し行ってくるね」


 ルルーはミニルのミックサック団をニリに招待する交渉の助力をすることとした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る