船での航海

 港町ニリより出港したギン達はピトリ国を目指し航海をしていた。


 その船の甲板でミニルが母レンより譲られた術に関する本を読んでいる。


 本を読んではいるものの難しいようで少し顔をしかめているようだ、そんなミニルにエイムが声をかける。


「ミニルさん、なんか難しいお顔をしていますけどどうしたんですか?」

「エイム、うん、母さんからもらった本の術を理解したいんだけど文字が難しくてうまく読めないの」

「ちょっと私に見せてもらってもよろしいですか?」


 エイムより促されてミニルはエイムに本を手渡しエイムが中身を確認してすぐに言葉を放つ。


「これなら私が読めますし、教えますよ」

「すごいわね、エイムは!早速教えてくれる」

「はい、それじゃあまずは……」


 エイムがミニルに本に書いている説明を始めている頃、甲板で海を眺めているギンにムルカが話しかけている。


「ギン殿、貴殿も船旅は初めてか?」

「そうですね、ルワールからコッポまで船で逃れたことはよく覚えていませんからね」

「そうか、まあ何にせよ今回の同盟は対帝国に関していえば反攻作戦のタイミングを計る重要な同盟であるからな」


 反攻作戦という言葉を聞いて、ギンが強く反応を示す。


「ムルカ殿、反攻作戦というのは?」

「今回の同盟が成れば国王陛下は帝国を包囲するように帝国に対し攻撃をしかけるお考えのようだ」

「包囲という事は……」

「そうだ、プレツ、スール、グラッス、ピトリによるな、場合によってはコッポよりも兵を出してもらうつもりのようだ」


 ムルカの話を聞いて、ギンはあることを尋ねる。


「帝国との終戦や停戦の話は?」

「兵で圧をかけることも戦略ではあると思う。帝国が正面より我らと戦って勝ち目なしと判断すればその話もあるやも知れぬ」


 ムルカの話を聞き、ギンは自身の考えを述べる。


「また帝国と遭遇すれば戦う事にはなるでしょうが、その際に奴らにも魔族が台頭しつつあることを話すのも1つの方法ではないでしょうか?」

「うむ、彼らがどこまで我らの話を信じるかは分からんが、1度やってみる価値はあるやも知れぬ」


 ギンとムルカは魔族が台頭しつつある今の世界で人間同士が戦い続けることの不毛さを感じていた。


 何とか帝国に魔族の存在だけでも告げることができないかと考え、ギンもムルカも帝国軍と遭遇した際に魔族の存在を告げることを決意した。


 今彼らに求められるのは一時休戦か、それとも戦いを早く終わらせるための戦いを続けることなのか?

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