傭兵の心の内

 ボガードの部下であるリンドが用意してくれた船に乗る前にギンは改めて帝国軍の動きの確認の必要性を話す。


「船に乗るのはいいが、フィファーナ将軍の部隊が島を離れたかどうかが気になるな。リンド殿といったな、現時点の情報は分かるか?」

「俺達は船を用意しろとは言われましたがそこまでの情報は分かりやせん」


 リンドの返答を聞いてジエイがギンにある提案をする。


「ギン殿、この街に常駐している兵士に私が聞いてきましょう。少々お待ちくだされ」

「悪いな頼むぞ」

「承知」


 そう言ってジエイは一瞬でギン達の前から姿を消し、その光景にウィル達は驚きを隠せない。


「何だよあれ?どうなってんだ?」

「あいつは忍術という秘術の使い手であれもその一環だ」

「何だよ忍術って?」

「俺から話すのは少し気がひけるから、あいつに直接聞いてくれ」


 ギンがそう言うとしばらく沈黙が続き、ウィルがギンに対する疑問をぶつける。


「なあ、ギンって言ったよな?」

「そうだが、何だ?」

「あんたはどうしてミッツ教団の依頼を受けたんだ?大金があんたの懐に転がり込んでくるからか?」


 ウィルのストレートな物言いを思わずミニルがたしなめる。


「ちょっと、兄さん!もう少し言い方ってものがあるでしょう」

「いや、構わん。せっかくだからお前達にも話しておこう」


 ギンの言葉を聞いてウィル達は無言で聞く姿勢をとった。


「帝国は俺が魔法剣という技術の使い手である事を知って俺を狙ってきたかも知れないんだ、だから護衛の依頼という形ではあるが、実質的にはミッツ教団とは共に帝国と戦う為の協力関係なんだ」

「そうなのか、逃げようとは思わなかったのか?」

「逃げていたさ、何からも」

「えっ⁉」


 ギンの言葉に驚きと疑問が生まれるウィルであったが、ギンは話を続ける。


「自分の過去、戦争、帝国全てから逃げて生きていた。だけど俺の戦いに勇気をもらったという者がいる、それを聞くと無様な姿は見せられない。俺達でこの戦いを終わらせなくてはいけないと思った」

「事情はよく分かりませんが、あなたもムルカ様やルルー様みたいに素晴らしい方ですね」

「俺は彼らほど清廉には生きていない。傭兵に過ぎないのだから」

「私達の父も傭兵です。だけどあなたも父も誇りをもって生きているように私には思います」


 ミニルの言葉を聞き、ギンは気遣いの言葉を言う。


「そう言ってもらえるとありがたいな」

「お構いなく」


 ギン達がやりとりをしているとジエイが戻って来る。


「皆さん、どうやらフィファーナ隊はすでに島を発ち、大陸に上陸寸前のようです」

「何⁉、だが今が小島に乗り込む絶好の機会だ」


 いよいよ補給施設の無力化作戦が本格化してくる。

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