競争の約束
魔物を追い払うことに成功したことを村長に報告する為に、ルルーとムルカは村長の家へと入っていく。
「お邪魔します」
ルルーの声に村長が反応をし、迎えに扉まで向かう。
「おお、聖職者様!ご無事でしたか」
「はい、魔物の件で村長さんにご報告にうかがいました」
「ではこちらへお座りください」
「ありがとうございます」
村長に促され、ルルーとムルカはテーブルの椅子に座る。
椅子に座るとルルーが口を開く。
「では結論から申し上げます、魔物を操っていたのは魔物でその魔物は転移魔法で逃げられてしまいました」
「転移魔法?」
「遠くに瞬時に移動する魔法です。気休めかも知れませんが魔術師殿の探知魔法によると少なくとももうこの国にはいないとのことです」
「そうですか、森の魔物は?」
村長の疑問にルルーが答える。
「操られていた魔物は我々が討伐しましたので、この村を組織的に襲うことはないとは思いますが、後日神官戦士団を派遣して魔物の動向を調査します」
「そうですか、ありがとうございます。これでわしらも村の復興に専念できますじゃ」
「我々は明日にはスップに戻りますが、ミッツ教団としては今後も復興支援をしていきます」
「感謝いたします」
ルルー達が村長への報告をしている頃、ギンとエイムはアルの家へと着き、扉の前から呼びかけた。
「ごめんください」
ギンが扉の前から呼びかけると、家の中からアルの母であるミオが出てきてギン達に声をかける。
「剣士様、魔術師様、どうされたんですか?」
「息子さんに魔物の件で話をしに来ました」
「アル君はいらっしゃいますか?」
「少々お待ちください」
そう言ってミオはアルを呼びに家の奥に行く。
しばらくするとミオがアルと共に戻ってくる。
「どうしたんだよにいちゃんとねえちゃん?」
「アル、まずはお前に謝らなくてはいけない。すまない、魔物を操っていた奴を仕留め損ねた」
「仕留め損ねたって。逃がしたってことか?」
ギンとアルがやりとりをしている中エイムも口を挟む。
「でもアル君、その魔物は転移魔法でこの国を離れたから魔法で魔物を操ってこの村を襲うことはありませんよ」
エイムの話を聞いてアルはしばらく考えてからギンにあることを告げる。
「にいちゃんが謝る必要はねえよ。この村を守ってくれたんだし、でも逃がしちまったんだったら競争だな」
「競争?」
「ああ、そいつがこの村を襲わねえんならその間に俺も強くなる。俺が強くなってもにいちゃんがまだ倒していないなら、俺が自分でそいつをやっつけてやる」
アルの強い言葉を聞き、ギンもまた強い言葉を返す。
「競争か、いいだろう。お前が強くなるのを楽しみにしているぞ」
「へへ、待ってろよ」
「俺達はこれからスップに戻る。今度会う時お前に良い報告ができるようにしたいな」
「じゃあ、にいちゃんも頑張れよ」
そう言ってギンとエイムはアルの家をあとにし、村長の家の方向へと歩き出す。
その道中でエイムがギンに話をしている。
「アル君に良い報告ができるといいですね」
「そうだな、その為にも魔物だけでなくブロッス帝国との戦いも終わらせないとな」
「帝国と戦わずに戦争を終わらせられればいいんですけど……」
「それは難しいが、方法もきっとあるはずだ。だが今は戦うしかない」
ギンとエイムが話していると、正面よりルルー達が歩いていた。
「あ、ギン、エイム、もう終わったの?」
「そっちも終わったのか?」
「ええ、終わったわ、ギン達のほうも無事に終わったみたいね。今日は泊まって明日の昼頃発ちましょう」
「そうだな、もう夕刻だし」
ギン達がやりとりをしていると、馬の蹄の音が聞こえる。
馬に騎乗している者の姿を見てムルカが声をかける。
「貴殿は司祭様の使いの者か?一体どうしたのだ」
「ブロッス帝国が再度このプレツに向けての侵攻を開始したようです。司祭様はその話をしたいとおっしゃっておりました」
「何だと⁉ルルー」
ムルカの呼びかけにルルーが答える。
「仕方ありません、朝一番で発ちましょう!」
次から次へと起こる戦い。平穏を取りもどす日は来るのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます